デフハンドボール日本代表、ケニアを下して初勝利!7位で東京2025デフリンピックを終える

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11月25日 デフリンピック競技最終日。駒沢オリンピック公園屋内球技場では、ハンドボールの順位決定戦が行われ、金メダルから8位までの順位が確定した。日本は25-20でケニアを下し目標とする1勝を挙げて7位となった。金メダルは後半にドイツを突き放したクロアチアが2連覇を達成した。フランスは初出場で銅メダルを獲得した。

いつも以上に躍動した津村開。「最後の試合ということで、後悔残らないようにっていう気持ちがプレーにも出てたかな」と語る

最終戦に間に合った!小林優太(左)と坂本州

一番に相手に当たりにいき得点もさることながら守備で引っ張った大西康陽

チーム4番目の得点を挙げた淺井啓太。今日はガッツポーズも飛び出した

「ラッキーボーイ」林遼哉はパスでも魅せる

「高校時代のトップフォームに辿りつかなかった」と語る齋も津村に次ぐ得点をあげ日本の攻撃を引っ張った

オープニングシュートは津村開、続いて大西康陽、さらにまた津村と決めて3-0。そこからケニアにリードを許すことはなかった。その後も翁孝嘉、齋亮人、林遼哉がシュートを決めGK水嶋貴一、定野巧も相手のシュートを何度とブロックし、前半を終わって13対8と日本がリードする。後半は大西、淺井啓太、齋、林、津村とシュートを決め、GK大崎英人の好ブロックもあり20分までに23対11とリードを広げる。その後は6戦目の疲れもあってか、ややプレーの精度を欠きだした日本の隙をケニアがつき23対15と追い上げる。齋、林が追加点を入れるもさらにケニアが5点追加して後半だけでは12対12のタイ。しかし日本がそれ以上の得点を許さず25対20で試合終了のブザーを迎えた。

歓喜、涙、コートに全員の感情が爆発した

ガッツポーズを作る者、感極まって涙に崩れる者、もらい泣きする者、コートには選手・スタッフの歓喜の環が生まれた。試合後のインタビューでも「メンバーだけじゃなくて、スタッフとか、これまで関わってきた皆さんの力での1勝だったと思うので、この気持ちは自分たちだけじゃなくて、もっと全体的に共有したい(小林優太キャプテン)」。「とんでもない成長をして、本当に頑張ってここまで来てるんだなっていうのをすごい感じさせられたニ年間だった(津村開)」「本当にたくさんの応援いただけたおかげで、怪我のことを気にせずに最後まで戦うことができた。本当に応援いただいたたくさんの方々に感謝の気持ちを申し上げたいと思います(齋亮人)」と口々に想いをコメントした。

観客に挨拶する亀井監督

亀井良和監督は、「昨日の準備から体もへとへとなんですけど、気持ちだけは本当に高まって、いい試合の入り方から最後まで、気を緩めることなく、本当に最後にさらにまた上げて、一番いい形で試合をしてくれた。ケニアの皆さんも最後まで、本気で戦ってくださったことが、私たちの力を引き出してくださったというふうに感じている。相手あっての今日の勝利だなと思います」とコート上、全ての選手への感謝をまず口にした。さらに「全てをマネージメントした中村有紀統括、スタッフ誰か1人がかけたらこの勝利はなかった。特に遅くまで選手のケアに尽力した山形佳冬さん、吉田岳央さんがいなければ最後まで選手はコートに立てなかった。そういった全てが積み重なって強さになった」と振り返った。自身にとってもこのデフリンピックに参加することで「コミュニケーションは聞こえることが当たり前であったが、聞こえないことが当たり前という世界を知り、その中でもハンドボールっていう普遍のものがあり、それを通じてデフの世界との関わり方を知れた。それにより今までのコミュニケーションの中にも新たな発見があった。一番大きな大切な宝物になった」と振り返った。

試合が終わった瞬間。左から布施蓮コーチ、亀井良和監督、斉藤純手話通訳、坂本州、小林優太

この歴史的な一勝はまだ始まりにすぎない。次の展望を聞くと満身創痍で戦った小林や齋は「まず体をしっかり治してから考えたい」と語った。津村は「次があればしっかり備えていきたい」と答えた。今回、トライアウトから参加した坂本州は「(今日は)点を取ることができずに悔しい結果だったので、この悔しさを糧に2年後の世界選手権であったり、4年後のデフリンピックに向けて練習を続けていきたい」と決意を口にした。林遼哉も「チームとして役に立つ良いプレーヤーになりたい」と答えた。ハンドボール歴2年のGK定野巧は「もっと相手のゴールキーパーや世界の健聴者のキーパーを参考にして、自分ももっともっと強くなりたい」と抱負を口にした。「今回のような試合を見てくれて、「私も」みたいな声が増えるとうれしいなと思っている」と小林も期待を語った。亀井監督も「人材の発掘」が大切と語り、「この試合を見て、我こそはと思う人、若い人とかいうだけじゃなくて、他の競技をやってて、ハンドボールの魅力を感じてくれて、じゃあこっちに転向してこようという人も含めて、裾野を広げいくことが大切だとおもう。そういった人の広がりに尽力したい」と述べた。

定野に抱きかかえられた大西康陽。亀井監督もその活躍に言及した

他国ではその多くが健聴者のクラブに属して活動している。これこそデフリンピックが目指す「障害のあるなしに関わらず共にスポーツを楽しみ、互いの違いを認め、尊重しあう共生社会づくり」ではないか。水嶋貴一や大崎英人のようにクラブチームで活動していた先駆者もいたが、今回のデフリンピックでスポットライトが当たった。今回、参加した選手が様々なチームで活動することで、その環が広がっていくと思う。私もまずはDeaf Handball Clubが参加する東京都社会人ハンドボールリーグも観戦してみようと思う。これからのデフハンドボールの広まりに期待する。

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