11月21日、駒沢オリンピック公園屋内競技場では、ハンドボールの準々決勝4試合が行われた。予選ラウンドB を首位通過し、世界ランキング1位のクロアチアと対戦した日本は12-35で敗れた。その他、ドイツ、フランス、セルビアが勝ちあがり、11月23日の準決勝はクロアチア対セルビア、ドイツ対フランスという強豪同士の対戦となる。日本は同日10時スローオフでセルビアに惜敗したトルコと再び順位決定戦を争う。

一戦、一戦、一勝に向け手応えを語った亀井良和監督
ドイツ戦では「相手に対してバラけたり、引いた形で守ってしまったため打ち抜かれた」(亀井良和監督)という反省を踏まえ、クロアチア戦では「しっかり相手にあたり、ボールに集めてディフェンスすること。攻撃はポスト役の翁孝嘉(背番号18)を片側によせてスペースを作り、そこを起点に攻める」という方針で挑んだ。
その狙い通り淺井啓太(4)の右サイドからだけではなく、船越弘幸(8)の左サイドからの得点も生まれた。また6日で4戦という厳しい日程で体力的にもきつい状況の中、攻撃の軸となるセンターバックは津村開(6)だけではなく、林遼哉(3)、坂本州(10)、齋亮人(9)が務めた。亀井監督は「経験を積んでこの大会の中で伸びてきている選手が出てきている。誰かが休んでも新しい戦力が増えてくるという意味でポジティブだに捉えている」「(目標の)1勝に近いている」と話した。

カットインなど積極的に前に出て2得点をあげた坂本州
王者クロアチアは、日本が得点するとすぐさま得点を返し、前半と後半でセットを入れ替えて全選手を起用するなど、層の厚さと格の違いを見せつけた。選手たちはその違いをどう感じただろうか。
津村に代ってディフェンスに入り、7mスローも務めたチーム最年少の林は「ドイツも強いと思ったが、(クロアチアは)さらに強かった。ディフェンスでは課題も感じたが、オフェンスは特に前半は得点も決め(2点)手応えもあった。チームの雰囲気はすごくよく毎試合ごとに成長しているので次の試合も楽しみ」と語った。

高い打点でシュートを放てる点が魅力の林。7mスローと合わせて2得点を記録する
チームキャプテンの齋は「世界の壁はすごく高くて。でも一人一人気後れすることなくチャレンジしていた。ただ、60分戦う中で逃げに入ってしまう時間もあった。そこは修正したい」と振り返った。
攻撃を牽引する津村は「ちょっと逃げたプレーはまだまだある。課題が多かった試合と個人的には感じた」と語った。

この試合では攻撃に重点をおいたプレーを見せて津村
チーム最年長の1人で、デフサッカーやフットサルで世界と戦ってきた船越は「ドイツ戦も含めやっぱり世界の壁は高く厚かった。それを経験できたのは大きな財産で、これからのハンドボールにつながる」と語り、更に「日本の武器である『素早く早く戻ること』『規律をまもること』そのよさを生かすという今までの経験が結構生きている。1週間一緒に過ごしチームの絆も深まってきている。試合ごとにチームの関係も高まって、最後の試合ではもっといい状態でできるんじゃないかと期待している」と語った。

「狭いところでもラインクロスを恐れず積極的に打った」と語る船越
一方、クロアチアの強さはどこから来るのか。Jakov Previsic監督とキャプテンのOliver LUSICに話を聞いた。現在のクロアチームの選手はみな、健常者のクラブチームに所属し、日々練習しながら週末にリーグ戦を戦う生活を送っている。Tomislav BOSNJAK(7)、Andrej JURIVEVIC(19)はクロアチアのトップリーグでプレーするプロ選手だ。LUSICも現在は2部リーグだが、2年前まではトップリーグでプロとしてプレーしていた。そのため代表チームとしての練習は11日間のみで十分だったと語った。

インタビューに応えるLUSIC(左)とPREVISIC監督(右)

コートの上で、積極的に指示を出してチームを引っ張るBOSNJAK
背景には、オリンピック、パラリンピック、デフリンピックを統括する組織がそれぞれ独立しているが、法律により同じ義務と権利を認められているという事情がある。パラスポーツ、パラ選手、聴覚障害者という区別はなく普通に「アスリート」なのだ。LUSICは現在、クロアチアデフリンピック委員会の委員長を務めながら、自分の事業も営むが、「ハンドボールを一番に愛してる」と語り、その全てを競技に注ぎ込んでいる。「東京でも金メダルと獲得したい」と言い切る姿から、クロアチアの強さの一端が垣間見えた。

招待で来場した児童も積極的にサインエールを送る
今日は平日の午前中にもかかわらず、生徒、学生の団体を初めて多くの観客が会場を訪れた。船越は「サッカーの仲間や友達が観にきてくれることは、エネルギーになるし、『やってやろう』、『目立ってやろう』という気持ちも出てくる。本当にありがたい」。津村は「サインエールで観客が一体となって応援してくださるっていうのをすごく感じている。それは本当に力になっています。本当にありがとうございます」とそれぞれ感謝を口にした。齋は「毎試合たくさんの方々に応援いただいていて、本当にそれが力になっているので、また残りの 2戦も我々全力で戦ってきますので応援いただけたらと思います。応援よろしくお願いします。」と呼びかけた。日本代表の試合もあと二つ。目標の1勝をつかむた、ぜひ会場に足を運び日本代表の背中を押して欲しい。



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