1月10日(土)、第20回ロービジョンフットサル日本選手権が富士見市立市民総合体育館(埼玉県富士見市)で開催された。節目となる20回目の大会には前回と同じくCA SOLUA 葛飾、CLUB VALER TOKYO、デウソン神戸ロービジョンフットサルが参加。ともに1勝で迎えた最終戦、デウソン神戸ロービジョンフットサルがCA SOLUA葛飾を3-2で下して初優勝を飾った。

今回参加したメンバーで記念撮影
ロービジョンフットサルに参加するFP(Field Player)は、なんらかの視覚障害を抱えている。視力が低いだけにとどまらず、ある人は中央が全く見えず、ある人は特定の視野しか見えない、特定の色が認識できないなどといった具合だ。それぞれの視覚的特性を皆で理解して、ゲームを組み立てるため「究極のチームスポーツ」(日本ブラインドサッカー協会 金子久子理事長)という声もある。今回はそこを突き詰めたチームが優勝した。
第1試合 CA SOLUA 葛飾 1-0 CLUB VALER TOKYO

大平英一郎(5)がPKで決勝点を奪う。GKは加渡主悟(1)
メインとなる2セットを組み替えながら戦う葛飾に対して、赤崎蛍、泉川璃空のドリブルからの持ち上がりが武器のTOKYO。第1ピリオド、葛飾はフィクソにつく赤崎、GK加渡主悟のディフェンスを葛飾は崩せない。一方のTOKYOも赤崎、泉川のクロスがゴール前にはいってもうまく収めてシュートで終われない。
0-0で折り返す。第2ピリオド、TOKYOは赤崎をアラにあげて、圧をかけるが葛飾のGK横山薫の好守に阻まれなかなかゴールを割ることができない。

赤崎蛍を抑える羽生健太郎(7)。特に赤崎について決定的な仕事をさせなかった
残り2分を切ったところで、葛飾の藤原昊世がTOKYOのペナルティー内で倒され、PKを得る。これを大平英一郎がゴール右上にきっちり決め1-0と先制。そのまま逃げ切って、去年に続き葛飾が初戦を飾った。

泉川璃空(10)はドリブル、シュートと攻撃の要として躍動したがゴールは遠かった

女子で唯一ピッチに立ちメインのセットで戦った西山乃彩。体力勝負となると厳しいがぜひ活路を見出して欲しい
第2試合 CLUB VALER TOKYO 1-2 デウソン神戸ロービジョンフットサル

同点となるゴール決めた末益祐吾(10)を祝福する池澤啓介(11)
第1ピリオド5分に、相手ペナルティーエリア手前でFKを得たTOKYOは、泉川が蹴ると見せかけて赤崎がゴール右サイドに豪快に蹴り込み先制する。神戸は慌てずしっかりボールを回して相手を崩そうと、左右のアラに渡してからのカットイン、クロスを狙うなど多彩な攻め手でTOKYOに仕掛ける。すると8分TOKYOの攻守のトランジションの遅れをついて末益祐吾がGKと1対1のシーンを作りゴール右にシュートを決めて1-1。ゲームを振り出しに戻す。

先制はTOKYO。FKを赤崎蛍(青右)がゴール右に決める
左アラの赤崎が積極的にドリブルで攻め込むがいいタイミングでシュートを打てない。パスを出すにしても受け手とシンクロせず決定機を生み出せない。1-1で第1ピリオドを終える。

赤崎(9)のシュートを防ぐGK高倉稔(2)。ブロックに入る池澤(11)
第2ピリオドは神戸のペース、出てくる選手がきっちり役割を果たしゴールに迫る。残り2分をきったところで、再三再四相手のボールをカットして攻撃に繋げていた末益が右サイドをドリブルであがりクロスを上げる。それをゴール左に構えた中丸太司が押し込み2-1と逆転。そのまま勝利を収めた。

「入ったか?!」決勝点のボールの行方をみる中丸太司(9)、守備にはいった泉川(10)
TOKYOのキャプテン高校1年生の新島悠太は試合を振り返って、「トランジションで前から守るのか、戻ってしっかり守るのか意思統一を欠きピンチを招いた。もっと選手同士での声かけをするなど改善していきたい」と次に向けて語った。

キャプテンを務めた新島悠太(11)。高校1年。個人としては手応えを感じるも。
第3試合 デウソン神戸ロービジョンフットサル 3-2 CA SOLUA 葛飾

大平のシュートをブロックする末益。左は池澤
共に1勝同士で優勝をかけた1戦。去年は葛飾が1-0で逃げ切って優勝を手にしたが今年は葛飾の監督古川将士も「去年とは別のチーム」と試合後に語るとおり、神戸が力強いプレーを披露した。
第1ピリオド開始後から神戸が主導権を取る。葛飾のGK横山のタイミング良い飛び出しもあり、神戸がタイムアウトをとる11分まで0-0で進む。そのタイムアウト直後、またも末益のクロスを中丸が押し込み1-0と神戸が先制する。

先制点をあげてガッツポーズの中丸(緑右)と祝福する初参加の方野一惺(3)
さらに残り1分を切ったところで今度は末益が右サイドをドリブルで上がって、カットイン。角度のないところから放ったシュートはGKの右脇をすり抜けファーサイドに転がりこんでゴールイン。神戸が2-0とリードを広げ第1ピリオドを終える。

縦の突破から技アリのシュートをファーへ流し込んだ末益(10)、右は篠瀬翔平(11)
「0-2は想定内。後半神戸の足は止まるから、しっかりボールを前に運んでいこう」と葛飾の古川監督はハーフタイムに選手に指示したいという。前半と一転して葛飾は速攻でゴール前にボールを運び遠くからでもシュートを放つ。8分、一度GKが弾いたボールに葛飾の伊藤舜が反応してゴールを決め2-1と葛飾が詰め寄る。

神戸のGK藤田大輝は知的障がいフットサルの代表強化指定選手。神戸は高校生から還暦を超える選手、ソーシャル、知的障がいの選手と多様な選手で構成されている
その2分後、神戸の中丸が抜け出してGKと1対1からファーサイドに流し込んで3-1と再び葛飾を突き放す。残り4分を切って第2ピリオドの後半から積極的にボールを運ぶ葛飾の羽生健太郎がGKをかわしてゴールを沈め3-2と追いすがる。その後も何度かCKを獲得するがやや攻めが単調となり神戸が守り切って3-2で前年優勝の葛飾を下し初の栄冠を獲得した。

第2ピリオド後半、葛飾の攻撃を引っ張った羽生(7)とDFにはいる池澤(11)
試合後に神戸の監督横澤直樹は「3年計画通り、優勝して本当にうれしい」と開口一番に語った。「自分たちの見え方、相手の見え方を研究し、特性をいかしたポジションはどこか、相手にとってやりにくい攻撃は何かを考え戦い方を変えて行った」とこの1年の変化を説明した。得点は中丸の3点にたいして2点だったが攻守に活躍が評価されて最優秀選手に選ばれた末益は「この1年間、あまり練習には参加できなかったが週1のオンラインミーティングでコミュニケーションをがすごく取れるようになり、監督からリクエストされた縦の突破などが生かせた。去年2位の悔しい気持ちを糧にして今回優勝できたことが嬉しい」と語った。

タイムアウトで指示を飛ばす横澤直樹監督(中央青いキャップ)
会場は少し寂しかったが新しい流れも見えた
試合は熱かったが、観客は41名と去年の4分の1とやや寂しい内容であった。場所が最寄り駅からバスと徒歩で20分以上かかること、そもそも今までの都内の錦糸町よりも遠いということがあったのかもしれない。去年、トルコで開催されたワールドカップに連続して選手を派遣した日本。神戸のように毎年新しい選手が増えているところもある一方でこの状態は少し寂しい。神戸はクラウドファンディングを募り(すでに終了)、ロービジョン普及のための講習会を2025年度だけで8回行うそうだ。まずロービジョンの認知普及をはかっていくことを目指している。眼のケアの大切さを説くことにも焦点を置いている。横澤監督は「障害者が精神的に健常者を支えるような共存社会を実現したい。そのための活動をしている。優勝したことでロービジョンの普及により弾みがかかるのではないかと期待している」と語っていた。各チームと共に切磋琢磨して広がっていくこと期待する。
最終順位
優勝:デウソン神戸ロービジョンフットサル
第2位:CA SOLUA 葛飾
第3位:CLUB VALER TOKYO
最優秀選手
末益祐吾(うデウソン神戸ロービジョンフットサル)



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