第19回 ロービジョンフットサル日本選手権が1月4日にひがしんアリーナ(墨田区総合体育館)にてCA SOLUA葛飾、CLUB VALER TOKYO、デウソン神戸ロービジョンフットサルの間で争われ、葛飾が2度目の優勝を飾った。

参加チームによる記念写真©Haruo.Wanibe/JBFA
ロービジョンフットサルとは
ロービジョンフットサル/英語でParitally Sighted football(部分的に見えている人のフットボール)は、何らかの視覚障害がある人による5人制のサッカー/フットサルだ。国際ルールでは、フィールドプレーヤー4名が、視覚障害でGKは弱視者または晴眼者が務めることになっている。視覚障害の程度はB2(矯正後の診断で、視力0.03まで、ないし、視野5度まで)の選手が2名以上フィールドにいることが求められる。国内の試合では条件が緩和され障害者手帳をもっている者、またそれに準ずる者が参加できる。

このようにピッチやラインとはっきり区別できるボールを使用する
パスがズレる、誰もいないところにパスを出してしまうということがたまにあること以外、筆者の目には普通のフットサルと何ら変わらない。スピーディーで、あたりも強い。実際に、ロービジョンのチーム以外でもフットサルのチームに加わってプレーしている選手もいるという。晴眼者と視覚障害者が混じって身近にプレーでき、かつそれぞれの違いを感じながら、お互いが協力して楽しむことができるスポーツでもある。日本代表の前主将のVALERの岡晃貴は「見えづらいけどその見えづらさをプラスにしてそれを補っていくっていうのが一番の面白さ」と語る。
今回は3チームの総当たりで順位を決定した。
第1試合: CLUB VALER TOKYO 0-4 CA SOLUA葛飾
去年の覇者CLUB VALER TOKYOは、前回MVPの泉川璃空と日本代表強化指定で日本代表の主将を務める赤崎蛍の2人を欠くチーム編成。対する葛飾は、FP4名を1つのセットとして定期的に入れ替えながらハイプレスでボールを奪ったらしっかりシュートする展開を心掛ける。前半3分にゲームが動く。左サイドでフリーキックを得た葛飾の角谷佳裕が直接シュートを放つ。ボールはブラインドとなり、GK加渡主悟は一歩も動けずそのままゴールを破り1-0と葛飾がリードする。

得点をあげた角谷 佳祐(中央2番)を祝福する葛飾のメンバー
更に残り2分で竹内雄亮がシュートを決めて2-0で折り返す。後半も、客席にいる多くのサポートをみながら、葛飾の監督古川将士は「引いて守ったりとか、時間をわざわざ使うような戦術を繰り返すのか」「どんどん攻撃して、スペクタクルなゲームを見せるか」と選手に問いかける。選手の後者でいきたいという声を尊重して前から攻撃的に戦い、伊藤舜が残り4分に追加点。更に残り2分クロスのボールを藤原昊世がゴール前でダイレクトで反応。シュートが決まり4点目をあげ、葛飾が去年0-4で負けた雪辱を晴らした。

4点目を決めた葛飾6番の藤原 昊世と駆け寄る伊藤舜(9番)
第2試合: CA SOLUA葛飾 1-0 デウソン神戸ロービジョンフットサル
昨年より参加のデウソン神戸と葛飾の対戦は、ダイヤモンドのフォーメーションをとる葛飾と、ボックスのフォーメーションを取る神戸ががっつり四つに組んだ好ゲームとなった。葛飾の古川監督は「引いてくると想定」していたが、サイドチェンジのパスを頻繁に交換してから隙をついて一気呵成に攻め込む。攻撃から守備への移行も前からプレッシャーを与えて、葛飾の選手を自由にさせない。前半残り3分に試合が動く。左サイドから葛飾の大平英一郎がカットイン、力強くシュートを放つと神戸GK山本翔太がハンブル、ボールはそのままゴールに吸い込まれて葛飾が先制した。

左、末益祐悟(10番)を交わして前にでる大平英一郎(5番)
後半もそれぞれが自分のゲームプランを貫く。神戸はフィクソの2人でボールを回しながら素早くピヴォの2人へ縦のパスを通し、相手のゴールをねらう。葛飾もハイプレスと守備への素早いトランジションを徹底し、両者なかなか好機が訪れぬまま時計は進む。残り2分を切ると、神戸はGK山本を下げてフィールドプレーヤーの池澤啓介を入れてパワープレーにでるも、葛飾のGK 細谷篤史の好ブロックもあり最後までゴールを割れず。そのまま1-0でゲームは終了。葛飾が2連勝で優勝を決めた。

残り4秒、神戸の中丸大司(9番)のヘディングをブロックする葛飾のGK 細谷篤史(1番)
第3試合:デウソン神戸ロービジョンフットサル 1-0 CLUB VALER TOKYO
最終戦は一敗同士の両チームが2位の座を争った。前半キックオフから神戸が積極的にTOKYOのゴールに迫る。神戸の中丸太司がバーを叩く惜しいシュートもあった。一方のTOKYOは23年世界選手権の時の日本代表主将でもあった岡晃貴をピヴォにおくがシュートまで持ち込めない。前半は神戸優勢のうちに0-0で終える。後半も神戸の素早い攻守の切り替えから攻撃をしかける。またしても中丸のバーを叩く惜しいシュートもあったが、なかなか点がはいらない。残り2分を切ったところで、TOKYOゴール右に構える池澤圭介へ神戸の日本代表強化指定に24年に選出された末益祐悟が「スルー」と声をかけ自陣からダイアゴナルのパスを送る。それを池澤がダイレクトボレーでシュート、ゴールを決め1-0とリードする。そのまま神戸が守り切り、チームとして日本選手権初勝利を飾った。末益は試合後に「アシストっていう結果ができたのは個人的にはすごく嬉しかった」「(掛け声について)改めてロービジョンフットサルで声ってすごく大事なんだなって改めて実感した」と振り返った。

決勝点を決めた池澤圭介(11番)がメンバーに祝福される
前回優勝のTOKYOは、今回二連敗で大会を終えた。前述の岡に聞くと、前回大会チームを引っ張った泉川璃空、久保善暉、赤崎蛍の欠場もあり、「急造チームの間が拭えず、単調な感じになった」。「みんな集まってまた一緒に戦えればいいなというふうに思います」と前を向いていた。
観客数は178名

声援を送る葛飾のサポーター。対戦相手の神戸へもエールを送り盛り上げた。
観客数は前回の159名から大きく数を伸ばした。参加チーム数が5チームから3チームに減ったが特に葛飾や、TOKYOが観客を呼び込んだ。また、ソーシャルフットボールの日本代表でもある神戸の末益の参加も観客増加に貢献した。葛飾の古川監督は「日頃色々なところで指導している中で子供だったり関係者だったりが見に来てくれたことはありがたい。さらに彼が他の観客を呼び込むことを期待したい」と語った。
まだIBSAから場所と日時が発表されていないが、今年はロービジョンフットサルのWorld Cupも計画されている。2023年の世界選手権では、初めて予選を突破するも最後は力尽き4位で終えた。2024年一杯は代表チームの主務をつとめた岡も「新しい選手が増えてきた」「去年は体験会なども初めて実施できた」と底辺を広げる活動に手応えを感じている。このモメンタムを加速するには、このWorld Cupでも好成績を収めることだと思う。2023年の学びを生かしてもらえたらと思う。
順位
優勝 CA SOLUA葛飾
2位 デウソン神戸ロービジョンフットサル
3位 CLUB VALER TOKYO
MVP
大平英一郎(CA SOLUA葛飾)

MVPに選出された大平英一郎とプレゼンターで前日本代表の辻一幸
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