【ブラサカ女子世界選手権2025】最終日 アルゼンチンのニ連覇で6日間の熱戦に幕。 日本は銅メダルを確保。

Blind Football

10月11日 コチ(インド)。IBSAブラインドサッカー女子世界選手権2025 最終日、決勝と3位決定戦が行われ、アルゼンチンが2-0でイングランドを下して優勝。日本はスコアレスのまま、準決勝に続いてPK戦へ突入。2-1でブラジルを下して銅メダルを確保した。

3位決定戦 日本 0-0 ブラジル(PK戦 2-1)

PK戦を制して喜ぶ選手たち

優勝の道が断たれたショックから1日で切り替えを余儀なくされた日本と、初めて参加して準決勝に進出したことを名誉に感じ試合後まるで勝利したかのように明るかったブラジル。

先発は日本が、大作眞智子(GK)、福田史織(フィクソ)、若杉遥(アンカー)、島谷花菜(右アラ)、西山乃彩(左アラ)。ブラジルはここまで1失点の固い守り。リーシア(GK)、イラーマニア(7番、フィクソ)、タマリース(右アラ、10番)、イリアニー(左アラ、11番)、セーラー(ピヴォ、8番)。ピヴォが相手陣内に残り、不動のフィクスとアラの3人がしっかり3角形をつくって守るのがブラジル。状況に応じてどちらかのアラが攻撃参加することがある。

若杉(中央14番)が積極的にボールを運ぶ

両者の初顔合わせは、まず日本が先手をとった。「この3枚が日本の1枚の攻めにどう反応するかを試したかった」という山本夏幹監督のトライとしてフィジカルの強いアンカーの若杉遥が、積極的にピヴォの位置に上がり仕掛ける。その代わり島谷が下り目でボールを供給、西山へ経由してペナルティエリア前の若杉にパスを繋げるなど幾つかの新しいパターンをみせる。試合の主導権を握るが、ブラジルの3枚、またピヴォが戻って4枚となる守りを崩せない。フォーメーションを一旦、いつもの島谷、西山が両翼に張り出す形に戻し、枠にボールが飛んだのは10分が過ぎてから。その後西山が何本かシュートを放つも決定的な形にならない。第1ピリオド残り3分を切ってから、福田に代えて村田光優をいれ、若杉をフィクソにして村田をピヴォにおくる1-2-1へスイッチする。これも村田の直線的な寄せを活かして、相手のバランスを崩そうという試みと思われる。

村田(左側)と島谷(右側)で動きを止める

ブラジルの駆け引きはそれほど目立たなかったがこういった抑えなどは

0-0で折り返した第2ピリオドは、GKを藤田智陽に、フィクソを中山杏珠に戻す。ブラジルにチャンスらしいチャンスを与えないが、日本も決定的なシーンを作れないまま、ジリジリと時間は進む。残り10分を切ってからは、右CKを得るとペナルティーエリアライン左45度に西山をおき、島谷がドリブルで戻りながら西山にパスを送るなど変化をつけるが、ズレたり、持ちすぎたりして、なかなか形がはまらない。結局最後までブラジルを崩しきれず、スコアレスドローで40分を終え、PK戦へ。

最後までいい形でのシュートが生まれなかった西山。ストライカーとしての更なる成長を期待

先攻はブラジルでタマリースが、左に決めて1-0。日本の一番手は過去2回(5月のアルゼンチン戦、先日のイングランド戦)と同じ西山。きっちり右に決めるもいつものガッツポーズなし。その後も1-1のまま3人目の若杉に。前日のPKでは左のグランダーで放ったボールはバーに嫌われたが、今回は同じコースに蹴り込みゴールイン。日本が苦しみながらもなんとかメダルを死守した。

若杉が決めた瞬間。左はガイドの彌冨圭一郎

試合後山本監督は「​​選手たちが、足がボールになるまで走って、一生懸命戦ってつかみ取った銅メダルだと思います。本当に価値あるメダル。しっかり褒めてあげてほしいなと思います。」と語った。前回、銀メダルに終わった時は、「代表としてどれだけ真摯に取り組んだのか」と厳しい言葉を選手に投げかけた山本監督。「僕らが優位性として持っていた、そのタクティカル/テクニカルなところが、もう1個変えていかないと、世界の中では勝っていけないっていうのが方向性として示されたっていうのは、この大会の総括」と締め括った。想像以上に進化が早いなか、今回やり切った中での結果。次に向けた糧として活してもらいたい。

試合の振り返りはこちら。

決勝戦 イングランド 2-0 アルゼンチン

2点目を決め、雄叫びをあげるガルシア・ソーザ。イングランドのディフェンスが詰めれなかった

前回大会では最下位、無得点だったイングランド。新加入(今年夏から参加)ミーガン・スミソン=ブース(4番)の4点、前回大会にも参加し日本戦ではPKを決めたキャプテンのサマンサ・ゴフ(9番)、コンディションが上がりきらず得点こそないが注目のルシア・ワーヴァントヴィッチ(7番)とタレントが育ってきている。先発は、イングランドは準決勝と同じアリシア・グリモンド(GK 1番)、アメリア・フォード(フィクソ 6番)、エミリア・ホプキンス(左アラ 3番)、サマンサ・ゴフ(右アラ 9番)、ミーガン・スミソン=ブース(ピヴォ 4番)。アルゼンチンはミカエラ・セゴヴィア(GK 12番)、ギジェルミーナ・コラレス(フィクソ 14番)、アウグスティーナ・メディナ=パエス(アンカー 4番)、ガルシア・ソーザ(右アラ 8番)、ヨハナ・アギラル(左アラ 10番)。こちらも準決勝と同じオーダー。この左右からの攻撃をイングランドが防ぎきるか、一瞬の隙をついて得点を奪うことができるのか、そこが試合の焦点となる。

第1ピリオド単騎で攻めるスミソン=ブース。連携した攻めがイングランドの次の目標か

第1ピリオド主導権を握ったのはやはりアルゼンチン。両翼の2人が切り込んでシュートを放つ。11分にはアギラルとGKがあわや1対1というシーンでフォードが割り込み防ぐ。残り30秒で、ガルシア・ソーザがドリブルから3人を掻い潜りシュートを放つも左に外れた。枠に飛んだシュートは2本。イングランドが守り切って第1ピリオドを終える。

第2ピリオド開始早々は、ガルシア・ソーザをそう簡単にプレーさせなかったが

第2ピリオド、開始6分でイングランドの累積ファールは四つとなる。後一つあたえると第2PKをアルゼンチンに献上することになる。このことがイングランドの選手の動きに影を落としていないだろうか。さらに、ガルシア・ソーザが全くスピードが落ちることなく、ボールを奪い、運ぶ。9分にはアギラルがゴール左45度、ペナルティーエリアから1mのところでフリーに。そこへガルシア・ソーザからショートパス、ダイレクトに受けすぐにニア上へシュート、イングランドの守備3人は一歩も動けず。ボールはゴールに吸い込まれ、1-0でアルゼンチンがリードする。

決めたアギラルに駆け寄るガイド、サンチャゴ・フーゴ

さらに、ガルシア・ソーザ、アギラル、さらにメディナ=パエスの間でサイドチェンジに、ゴール前のダイレクトパスの交換から最後は右サイドのガルシア・ソーザがカットイン、イングランド選手の隙間をぬって右足からゴールファーサイドへのシュートがネットに突き刺さり2-0とリードを重ねる。その後、スミソン=ブースの単騎での攻撃からのシュートもあったが右にはずれ、そのまま試合終了。アルゼンチンが世界選手権連覇を達成した。

ガルシア・ソーザが攻撃のテンポを作り、他の選手をコントロールする。試合後に彼女にどうしてああいったプレーができるのか聞いてみた。「ともかく集中して仲間の、コーチの、ガイドの声を聞く。そして練習でやったことを選択するだけ」とそっけない。「次のタイトル、メダルを取るために頑張る」と貪欲さが彼女の源泉なのかと感じた次第だ。

敗れたが、目標のメダルを手にしたイングランドチーム。今大会の収穫の一つだ

試合の振り返りはこちら。

大会を振り返って

全チームの集合写真。前回はなかった光景。主催者の労に敬意を表します

全18試合の最終順位は以下の通りだ。アルゼンチンは5試合通じて失点0、引き分け、負け0で完全優勝を達成した。日本はチーム得点数が2位だったが、かえすがえすPKでの負けが悔しい結果となった。前回大会に比べて、プレー時間は30分から40分にのびたが、総得点は26点から28点とそう大きくなのびなかった。得点できなかったチームは3チームから2チームへ減った。チームごとの得失点で並べると、アルゼンチンが一つ頭抜け、カナダが大きく負けていることがわかる。アルゼンチンのみが得失点差がでプラスだったことから考えると、全体的に力のさが詰まってきたといえよう。実際にみていて前回ほど、チームごとの力の差を感じなくなってきた。そこがこの2年間の大きな進歩なのかもしれない。

  得点 失点 得失点差
アルゼンチン 5 0 0 10 0 10
イングランド 3 1 1 5 4 1
日本 3 0 2 6 1 5
ブラジル 1 2 2 2 2 0
インド 2 0 2 4 3 1
トルコ 1 0 3 1 3 -2
ポーランド 1 1 2 0 4 -4
カナダ 0 0 4 0 11 -11

 


さて、23年の前回大会では、大会が終わった時点で次は25年と少なくともチーム関係者にはアナウンスされていた。今回は聞く限り案内はないようだ。32年パラリンピックでの正式種目を目指すのであれば、少なくとも29年まで実施する必要がある。今度は日本で開催することはできなだろうか。スポンサーの出現に期待したい。

優勝 アルゼンチン
準優勝 イングランド
3位 日本
4位 ブラジル
5位 インド
6位 トルコ
7位 ポーランド
8位 カナダ

MVP&得点王 ガルシア・ソーザ 6点(アルゼンチン)

ベストゴールキーパー アリシア・グリモンド(イングランド)

フェアプレー賞 カナダ

最後は一緒に。更なる切磋琢磨を期待する

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