10月8日 コチ(インド)。IBSAブラインドサッカー女子世界選手権2025 四日目、グループAでは決勝トーナメント進出をかけてブラジル対ポーランド、イングランド対インドがグループBでは日本対アルゼンチン、カナダ対トルコが順位をかけて対戦した。その結果、10月10日の準決勝はイングランド対日本、アルゼンチン対ブラジルのカードとなった。開催国インドは5位決定戦でトルコと対戦する。グループリーグ最終順位は以下の通り。
グループA
1位 イングランド(2勝1分)
2位 ブラジル (1勝2分)
3位 インド (1勝2敗)
4位 ポーランド (1分2敗)
グループB
1位 アルゼンチン(3勝)
2位 日本 (2勝1敗)
3位 トルコ (1勝2敗)
4位 カナダ (3敗)
グループB 日本 0-1 アルゼンチン

ゴールを奪い感情を爆発させるソーサ・バレネチェと駆け寄るガイド サンティアゴ・フーゴ(左)
暑さ対策のため現地時間8時半キックオフ。選手は前日21時に就寝、朝4時に起床したという。前日のインタビューでは「予選で(アルゼンチのような高いレベルの相手と)対戦できるのはすごくポジティブ」と語っていた山本夏幹監督。すでに準決勝進出を決めている日本にとって、勝ち負け以上に、優勝を目指す上でライバルの今を体感する貴重な機会となった。

若杉とソーサ・バレネチェのマッチアップ。
日本は、藤田智陽、中山杏珠、若杉遥、島谷花菜、西山乃彩。アルゼンチンは、 メリーサ・フローレス、サンドラ・ヤナヘ、アグスティーナ・メディナ・パエス、ガルシア・ソーザ、ヨハナ・アギラル。主に右サイドを主戦場とするソーサ・バレネチェを誰が抑えるかがひとつの鍵となる。5月のワールドグランプリ決勝では左サイドの西山がマークしたが、今回は若杉が左サイドを担当する。この点がひとつのポイントとなった。

相手のFKに真っ先に飛び込む島谷(13)と西山(9)
5月に怪我をしたアルゼンチンのアギラルへのボールを奪い、そのままアルゼンチンの左サイドからの攻撃をしけかけることを主眼に日本はゲームを組み立てた。そのため、対峙する島谷は第1ピリオド開始直後から向き合う大柄なメディア・パエスに対して積極的に仕掛ける。アルゼンチンにボールが渡ると素早く戻って守備に献身的に対応した。ただ、アギラルにボールが入ると、日本のフィールドプレーヤー全員がそちらに集中し、反対サイドのガルシア・ソーザのケアが薄く場面が散見された。11分の失点は、そのアギラルに全員の注意があつまり、アギラルから反対サイドへパスがでた際に、日本の守備がはずれててガルシア・ソーザにボールが渡りGKと1対1の形を作ってしまった。そこを落ち着いてしっかりファーサイドに決めたガルシア・ソーザ。敵ながあっぱれというゴールでアルゼンチンがリードして第1ピリオドを終わる。
第2ピリオド、アルゼンチンは小刻みに選手交代をしながら日本に対峙。日本はそもそも交代が福田史織、村田光優の2名のみ。島谷、西山がきつそうになっても二人同時に交代はできない。結局、FPを全員出場させて日本に決定機を作らせなかったアルゼンチンがそのまま押し切った。

試合後、輪になって喜びを表現するアルゼンチンチーム
山本監督は決勝トーナメントに向けて今日できたことできなかったことを冷静に分析していたが、選手はどうであろうか。西山に話を伺うと「(自分として)練習で足りないところはやっぱり試合でたかも」と語った。「相手の寄せの速さにそこそこアジャストできたのではと感じている(中略)思っているものしか出せないので、その中で自分ができるだけドリブルの技術で打ちやすいところに持っていって、冷静に打てるようにするとか、そういうところを工夫しながらやっていきたいと思う」と前を向いた。日本のファンへは「応援ありがとうございます。えっと、今回2位通過ですけど、無事準決勝に行けるので、次勝って決勝でもう一度アルゼンチンと戦って金メダルを取れるように頑張るので、引き続き応援よろしくお願いします。」と締め括った。

ピヴォとしての爆発に期待
試合の振り返りはこちら。
グループB カナダ 0-1 トルコ

相手を背負いながらこの一撃がトルコに勝利をもたらした
初出場、これまで得点を上げていないもの同士の試合は、主にトルコが攻め、カナダが凌ぐ展開となった。トルコのピヴォとして攻撃を一手に引き受けたギュルシャフ・アクトゥルク(7)がトルコの初得点を上げて勝ちきった。
試合の振り返りはこちら。
グループA ブラジル 0-0 ポーランド

試合終了後の歓喜のポーランドチーム
こちらも初出場同士の試合、お互いにピヴォを1枚相手に置いて、3人は自陣に引いて守る。状況に応じてもう一人前に出て二人で攻めるという展開であった。お互いがコンビネーションで攻めるというレベルにまで熟成されていない。そのため、肉弾戦に陥りやすく、突っ込んでは跳ね返されるを交互に繰り返す印象であった。ブラジルが押し気味に進めたが、最後のフィニッシュには至らず、結局0-0で試合を終えた。ポーランドにとってみるとこれが大会通じての初の勝ち点となった。

前回にはない新たなブラサカを持ち込むかブラジル
試合の振り返りはこちら。
グループB イングランド 2-1 インド

イングランド得点源となったスミソン=ブースの左足。ガルシア・ソーザと並んで暫定得点王トップに
グループリーグは、インドvsブラジルで始まり、イングランド vs インドで終わりを迎えた。開催国として前回の4位を超えたいインド。前回大会、5月のグランプリでも0点に終わったがすでにチームに加わって3ヶ月というミーガン・スミソン=ブースの3得点もあり、この試合で負けなければ準決勝に進むイングランド。100名を超える観客を前に熱のこもった試合となった。
両チームともピヴォが1枚はかならず相手ペナルティーエリア付近い残すような形を取る。一進一退の攻防が続く中、先手をとったのはイングランド。16分に、GKからのフィードをとったスミソン=ブースが右手に相手のDFを2枚をおきながらも左足でゴールファーサイドにシュートを決めて先制する。

5位決定戦でもこのパフォーマンスは見たい
勝たなければならないインドに対して、イングランドは小刻みに選手を交代させながら決定的なシーンを作らない。しかし第2ピリオド 11分、右コーナーからシャパリーラマナシュが、ドリブルでペナルティーエリア沿いそのほぼゴール正面までドリブルで相手を交わしシュート。ちょうどDFの股間を抜けてそのまま右隅に決まり、インドが1-1に追いつく。しかし、残り1分になろうかというところ、サマンサ・ゴフが持ち上がってシュート。相手DFに当たったボールは右45度にいたスミソン=ブースの足元に。カットインしながら相手DF2人を置き去りにして左45度の位置から、ファーサイドへのシュート。これが決まり再びイングランドが2-1とリード。そのまま試合を終えて1位通過を決めた。

試合終了のホイッスルがなった瞬間のイングランドチーム
イングランドの監督アンソニー・ラーキンは「慣れないインドの天候に、交代を使いながら対応した。大変なゲームだった」「バーミンガムから26ヶ月の間にみんな大きく進歩した」「ともかくメダルを持って帰りたい」とコメントした。
試合の振り返りはこちら。

ゴール裏から観戦する観客
グループリーグを振り返って
これでグループリーグの12試合が終わり10日は以下の通りのスケジュールとなった。
12時(日本時間) 5位決定戦 インドvsトルコ ライブ
15時30分(同) 7位決定戦 ポーランドvsカナダ ライブ
20時(同) 準決勝1 イングランドvs日本 ライブ
22時30分(同) 準決勝2 アルゼンチンvsブラジル ライブ
これまでの得点ランキングは以下の通りだ。
ミーガン・スミソン=ブース(イングランド) 5点
ガルシア・ソーザ(アルゼンチン) 5点
島谷花菜(日本) 3点
ヨハナ・アギラル(アルゼンチン) 2点
シャパリーラマナシュ(インド) 2点
西山乃彩(日本) 2点
やはり確実に得点をとれる選手を擁するチームが上位に出てくる。チームで見るとアルゼンチン6点、イングランドと日本が5点、この3チームがメダルへの最短候補となろう。
日本が優勝するのに必要なものは何だろうか。筆者からすると「楽しむ」ということではないだろうか。山本監督もアルゼンチン戦後「日本的というか、真面目というか。この敗戦で沈むんですよ」とチームの状況に言及していた。他のチームをみると、負けていてもどこか明るい、次があるんだとという印象を受ける。筆者のFacebookで当日の写真を多く公開しているのでみていただきたいが、試合開始前、たいていの選手が明るくにこやかに笑っているように感じる。ゴーグルをつけているので口もだけの判断ではあるが。どうも日本の選手は全体的にまじめな顔をしている。自分のサラリーマン生活でよく言われたのが「ネアカたれ」だ。常に自体を楽観的に構えていればなんとかなる、ということから言われていると理解している。大変おこがましいが、日本選手たちは、ぜひ口もとにスマイルをもって戦てもらいたい。最後は楽しんだもん勝ちではないだろうか。アルゼンチンの選手は、明るい、本当に明るい。イングランドの選手も明るい。残り二試合、明るく躍動する日本チームをみたい。

試合後のインドチーム
【訂正】ガルシア・ソーザの得点が間違っておりました。訂正するとともにお詫び申し上げます(2025年10月13日記)
コメント