4年を迎えたブラサカトップリーグLIGA.iが過去一番の観客を集めて開幕

Blind Football
品川キャプテン森田翼の入場

ブラインドサッカーの「LIGA.iブラインドサッカートップリーグ2025」が2025年8月2日(土)に品川区立総合体育館(東京都品川区)で開幕した。大会史上一番となる857名の観客が集まった。開幕戦では品川CC パペレシアルがPK戦で埼玉T.Wingsを下し、続く試合ではfree bird mejirodaiが復活した丹羽海斗の鮮やかなダイレクトシュートによる1点でbuen cambio yokohamaに勝利した。

4年目となるLIGA.iはここが違う

試合開始前の品川、埼玉両チーム。ブラサカならではゆったりとした雰囲気。

競技性、興行性、組織性(チーム運営、普及活動への注力)の3つの点を伸ばしていくことを目的に始まったLIGA.iも今回で4年目だ。関東の4チームが参加し、総当たりで順位を競うのは例年通りだが、今年の注目点は3つ。
1つは第三節が横浜武道館で初めて開催される点だ。横浜を本拠地とするbuen cambio yokohamaもここ1年でチームとしてグッと成長している。それが大会運営にどう生かされるか注目だ。
2つめはPK戦の導入だ。第2ピリオド終了時に引き分けの場合、PK戦を実施。勝者に勝ち点2を敗者には勝ち点1が与えられる。従来は引き分けの場合、両チームに勝ち点1づつ。最終節の順位決定の際のみPK戦が実施されていた。ところが昨季は第2節を終えた時点で、品川が二連勝で勝ち点6、暫定2位のmejirodaiが2戦引き分けで勝ち点2と、品川の優勝が最終節を待たずして決定してしまった。今年は新ルールにより、最終節まで優勝争いが続くことが期待される。
そして3つ目が再び全節有観客の試合となることだ。今までは第2節がオンラインのみの観戦となり、第1節の盛り上がりがそこで途切れる印象があった。今年は全節で有観客となり会場での応援がチームのパフォーマンスを後押しするだろう。

品川が2-1でPK戦を制する

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チームトップのシュート数を放った森田(中央青ユニ)

開幕戦は前年王者、地元の品川が埼玉を迎え撃つ形となった。LIGA.iでの対戦は、これまで2勝1敗で埼玉が勝ち越している。第1ピリオド、キックオフでボールを受けた菊島宙がそのまま持ち上がり右サイドからのシュートで試合が始まる。品川は川村怜が右サイドからシュートを放ち、ついでキャプテンの森田翼が左サイドからのファーサイドにむけてシュートを放つ。埼玉はフィクソに加藤健人、右サイドの山中優汰が引き気味な位置で主に品川の森田をケア。菊島が攻めと川村のケアと上下動する形になる。対する品川は井上流衣が左サイドの高い位置におきゴールクリアランスによる配球、あとはドリブル中心に森田、川村が攻め上がる。埼玉はゴールクリアランス、自陣からの対角のパスを多用して両サイドに張り出す菊島宙、助川裕太郎にボールを送る。第1ピリオド、品川は8本のシュートを放ち枠を捉えたのが3本。埼玉は4本で枠内2本。特に埼玉のGK高橋収平がよいセービングを見せ、12分の森田、15分の川村の1対1で放ったシュートを防ぐ。埼玉も菊島が12分位フリーキックから、クイックにシュートを放つが、GK藤原幸紀にガッチリキャッチングされる。

埼玉の菊島宙(背番号9/中央赤ユニ)は最後まで品川ゴールを割れず。

0-0で折り返した第2ピリオド、埼玉は加藤を1段前に配置し、攻めの姿勢を見せる。実際コーナキックでは埼玉が品川の倍(8回)のチャンスがあったがゴールに結びつかない。一方で品川は終了間際、17分、19分に第2PKを獲得するが、キッカーの佐々木ロベルト泉は1度目が左に外し、2度目はGKに阻まれゴールを割れない。18分には、ゴール前で井上と佐々木が「連携ミス(小島雄登監督)」で交錯、完全に相手の裏をとった絶好の機会を逃す。埼玉の守備と高橋のファインセーブにも阻まれ品川は最後までゴールを割ることができなかった。

佐々木ロベルト泉(左)の第2PKをブロックする高橋収平(背番号1)。シュートブロックが光った。

第2ピリオドを0-0で終え、開幕試合から新ルール適用で3人制のPK戦へ。先行の品川は最初のキッカーの川村が外し、埼玉の菊島が決めて0-1と埼玉がリード。品川は3人目の佐々木が決めて追いつく。サドンデス2人目の品川の寺西一が右上隅にシュートを決めてリード、埼玉の最後のキッカーが外して品川が薄氷を勝利を収めた。試合ごとに選出されるPlayer of the Matchには、佐々木ロベルト泉が選ばれた。

試合を決めた佐々木の一撃

試合後、品川の小島監督は「PK戦に行く前に決めて勝ち点3が欲しかった。最後の3分くらいは、勝ち点3、2、1、0すべて取るチャンスがあり、行くのか(勝ち点3を取りに)どうか判断に迷った」とPK戦に対しての戸惑いと難しさを語った。一方で埼玉の菊島充監督は、「PK戦で勝てるかと思ったが悔しい。システムとしてはLIGAも盛り上がりだろう」と前向きに捉えていた。

インタビューに応える品川、小島雄登監督。

今回は体育館での対戦で、音の反響が通常の外の環境とは違い、度々ボールを見失うシーンがみられた。また川村は「湿気の関係でボールがひっかかり、前に思ったように転がらなかった」と振り返った。今回のLIGA.iは第1節と第3節が屋内での対戦となるためこれがどう影響するか注目だ。

川村怜(背番号5)のドリブルもコンディションの影響でダイナミックさが影を潜める。

1点が遠いyokohama。善戦するも追いつけず

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得点を決めて喜ぶ丹羽海斗(背番号2)、ガイド鈴木仰、永盛楓人(左から)

2試合目は、free bird mejirodaiとbuen cambio yokohamaの対戦。LIGA.iでの前回11月の対戦は0-0の引き分けでyokohamaが初の勝ち点1をとった。ただその1ヶ月後の日本選手権準決勝ラウンドでは1-0でmejirodaiが勝ちを収め「勝ち癖みたいなものがついている(山本夏幹監督談)」組み合わせだ。yokohamaがLIGA.i初勝利をおさめるか。復帰した丹羽海斗や、若杉遥、島谷花菜(以上mejirodai)、西山乃彩(yokohama)といった女子代表強化指定選手に注目して観戦した。

短い時間もLIGA.i初登場で一歩も引けを取らなかった西山乃彩(背番号9、オレンジ)

品川埼玉戦では30本@ピリオドのゴールクリアランスがセンターラインを越えて行き交ったが、この試合は第1ピリオドで15本。mejirodaiがサイドチェンジのパス、対角に送るパスをyokohamaの倍以上を記録し、チーム戦術による違いを堪能できる試合だった。

齊藤悠希(左)と園部優月の競い合うキャプテン。

第1ピリオド開始から5分間はシュートもなく、代表強化指定に選ばれた左アラに位置するyokohamaの齊藤悠希が積極的に攻め込んだりで互角の戦いだったが、徐々にmejirodaiがボールをキープして試合の主導権を握る。このピリオドはmejirodaiがyokohamaの倍以上のコーナーキックをとり、それが結局得点に繋がった。11分にmejirodaiが右コーナーキックを獲得すると、キッカーの園部はボールをゴールマウス左に1人、フリーで待つ丹羽にパスを送る。鈴木仰ガイドの「ダイレクト!」という声に反応した丹羽が右足をダイレクトで振り抜き、ボールはファーサイドに吸い込まれてmejirodaiが1-0とリードする。山本監督は「繰り返し練習した形。今シーズンは丹羽と北郷宗大の大会にしたいとおもっているなか、一発回答のゴールだった」と振り返った。丹羽は「見える人との協力でできたゴール」と胸をはった。

丹羽海斗のダイレクトゴール!

第2ピリオドは、チームでは齊藤悠希に次ぐyokohamaの点取り屋の和田一文がシュートを放つなどmejirodaiのゴールに迫るがしっかり打てず。mejirodaiは、自分たちのスタイル、サイドチェンジのパス交換から縦への動きをしっかり繰り返す。実際第2ピリオドもパス交換数はmejirodaiが筆者カウントで14、yokohamaが9と数字も裏付けている。残り5分を切ったところで、ゴール前にはるyokohamaの近藤凌也がフリーでボールを受けるチャンスが2度あり、1度はシュートまでいったが、GK泉健也にしっかり抑えられて得点には結びつかず、1-0でmejirodaiがしっかり勝ち切った。

競い合う背番号5同士、左 yokohamaの近藤凌也、右mejirodaiの永盛楓人

ちなみに試合後PK戦導入について聞かれた山本監督は「やはり、晴眼選手の方がしっかり蹴れるのでPKはやりたくなかった。試合の中でもできる限り1対1を避けるようにコントロールした。(残り二試合もPK戦は)避けます」と語った。敗れたyokohamaの齋藤は「今まで、齋藤、近藤、和田、中村が交代なし戦わ座郎得なかったところを、北原開、西山がしっかり高いプレッシャーの中で戦えたことは、彼らの練習へのフィードバックにもなりより高いレベルを目指せる」と負けてはしまったものの収穫を語った。

観客動員数は記録を更新

開幕戦前には品川CCトップチームコーチ 森脇良太氏が盛り上げる。

今回、品川区をホームとする品川CCは、入場セレモニー、オフィシャルチアリーダーにRainbow Venusによるハーフタイムショーで会場を盛り上げ観客数は過去最高の857名となった(前回は712名)。チームごとのフラグや、サポーターによるコール合戦など、各チームがファンの巻き込みを強化している様子が伺えた。
一方で開幕戦が終わったあとで観客の入れ替わりがみられたところに、次のチャンスもあるのかなと感じた。最初に記述した通り、今回は三節とも有観客、最終節に向けて応援の盛り上がりを期待したい。

左にyokohama、右にmejirodaiのサポーターがチームカラーを身につけて応援。

これで暫定順位は、1位mejirodai 3点、2位品川 2点、3位埼玉 1点、4位yokohama 0点となった。フルメンバーが揃ったmejirodaiが2度目の優勝を果たすか、それとも、品川が連覇を果たすか、晴眼選手の力量が伸びてきた(菊島監督談)埼玉か。次節12月7日(日)フクシ・エンタープライズ墨田フィールド(東京都墨田区)に注目だ。

なおこの試合からマスクアンパイアが試験的に導入された。これはフィールドプレーシャーのアイシェードのズレ等をチェックする役割を担う。2023年の世界選手権で導入された前例がある。その他、既報の通り、試合前ピッチ練習の前に審判の確認の元、パッチを貼ることも試験的に導入されている。B2,B3,晴眼者の参加がなくてはならない日本のブラインドサッカー。プレーの公平性を保つための処置だという。ゴールボールのようは厳格な運用がなされるのか。この処置も見守りたい。

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