5月24日、大阪うめきた広場で開催されたIBSA女子ブラインドサッカーワールドグランプリ2025決勝戦、女子日本代表はアルゼンチ代表と対戦しPK戦を1-0で制して初代チャンピオンに輝いた。
決勝戦: アルゼンチン 0-0(PK0-1) 日本

1人目のキッカーとしてPKを決めた西山乃彩
23年8月初めて開催された世界選手権の決勝戦はアルゼンチン対日本。日本は第1ピリオド菊島宙のゴールで先制するも第2ピリオド8分に同点、残り1分46秒で累積ファールからの第2PKを与え、ヨハナ・アギラルに逆転の一撃を決められ初代王者を逃した。それから2年636日(山本監督談)、その雪辱をうめきたの地で晴らし、「下剋上」を果たした。

キープレーヤーのソーサ・バレネチェ(背番号8)に対して4人でしっかり守る。
エースストライカーのジョアナ・アギラル(背番号10)を怪我で欠くアルゼンチンに対し、3人のメンバーが参加できなくなったためフィールドプレーヤー4人で戦ってきた日本。初戦と同じように、山本夏幹監督のゲームプラン通り、守備を固めて相手の隙を狙う。アルゼンチンのキャプテン、グラシア・ソーサ・バレネチェ(背番号8)の右サイドを基点に左右にシュートコースを狙うが、日本は4人が陣地に戻ってしっかり固める。日本もゴールクリアランスから相手陣に侵入するも決定的な形を作れない。両チームともはっきりしたシュートはアルゼンチンの一本で終わる。

第1ピリオド終了直前に初のシュートを放つソーサ・バレネチェ。
第2ピリオドはより日本がアルゼンチンゴールに迫るシーンが増える。特に島谷花菜が積極的に相対するディフェンスのメディナ(背番号4)に仕掛け、コーナーキック、フリーキックの機会を作る。その機会から西山乃彩がシュートを放つ。

アルゼンチのプレッシャーをものともせず自分のプレーを表現する島谷。

ダイナミックなフォームから力強いシュートをうつ西山。
ただアルゼンチンの守備に阻まれ決定的なシーンは作れず。残り5分を切ったところでアルゼンチンが四つ目の累積ファールを犯す。その時点で日本は3つ。前回の轍は踏まないと、ゲームプランを守り、0ー0で40分を終える。

最後まで前線から最後尾まで縦横無尽に走った竹内。
PK戦はアルゼンチン先攻。順番は先日のイングランド戦と同じ14番、4番、8番。1人目はゴール右に外す。日本の1人目、西山は昨日のPKの失敗をきっちり修正して、「力まず練習通りいこう」と今度はゴール左にボールを突き刺す。
1-0。アルゼンチン2人目もゴール右に外す。2人ともイングランド戦と同じ方向。日本2人目は島谷はGK正面でミカエラ・セゴビア(背番号12)がしっかりキャッチ。アルゼンチン3人目は、獅子奮迅の勢いでチームを引っ張ってきたソーサ・バレネチェ。昨日も彼女が決めている。「昨日のPKを参考にして山をはった」という藤田智陽。

味方のシュートを見守る藤田。
昨日と同じように左飛んだボールを藤田がキャッチ。「ゴールネットが揺れず、智陽が触って、彌冨さん(ガイド)が喜んでいることを確認」(西山談)して勝利を確信、歓喜の声が上がった。

「本当に準備してやってきたことがこの決勝にだせたのはチーム・選手のおかげ」と語った山本監督
3位決定戦: オーストラリア 1-0 イングランド

初勝利を選手たちと抱き合って喜ぶ監督のサラ・ヘプワース(左から4人目)
日本に圧倒された試合を振り返りなが「気後れせずに戦おう」と選手たちを鼓舞して試合に臨んだとサラ・ヘプワース オーストラリア代表監督。国際大会初出場/ランキングなしのオーストラリアが第2ピリオド13分、チャナカン・ブアカオ(背番号6)の左サイドからのシュートでイングランドから1点をもぎ取り、初得点、初勝利で3位に輝いた。「この5試合で選手たちは本当に成長した。10月の世界選手権に向けて、大会がどういったものか、優勝するためには何が必要かを感じる素晴らしい機会だ」と振り返った。

ブアカオの右足のシュートがゴールファーサイドに向かって飛ぶ!

何度となく、シュートを放つもゴールを割れなかったサマンサ・ゴフ。「彼女以外にも3人参加できなかったのが残念」とイングランド監督アンソニー・ラーキンの弁。
視線は10月の世界選手権、LA28へ
どの国も10月にインドで開催される第2回の世界選手権についての意気込みを語る。イングランドのアンソニー・ラーキンは「インドに向け、アルゼンチン、日本という世界のトップと対戦する経験を積むためにここにきた」と応えた。オーストラリアのヘプワース監督も「とても若いチームが、世界王者なるために何が必要かを学ぶには良い機会」と語る。アルゼンチンはもちろん初代王者を守るために戦うと宣言した。そのアルゼンチンに対して「プレータイムでまだ決着がついていない。世界選手権で勝ち切りたいという思いは皆共通でもっている」と若杉遥も語った。山本監督は「この守備的な組織力という我々のストロングに、島谷の運んで突破しシュートまでいく力、その相方としての西山がどう絡んでいけるのか」それに「竹内の献身的なプレー」を次の10月に向けてのポイントに挙げた。「チームの屋台骨」としての若杉の完全復帰と、今回欠場した田中一華の復帰。今回はNE(対象外)となったが菊島宙と鈴木里佳も控えている。チームが掲げた「わくわくするブラインドサッカーを見せよう」というビジョンに向かって真摯にブラサカに向き合うことで、新しくやってみようと思う選手が増えることがその先にLA28につながると山本監督はいう。今回の勝利は素晴らしいが、選手はすでに次なる目標を見据えている。ぜひ、世界選手権での活躍したい。
その前にまずは日本代表の優勝おめでとうございます!

メダルを掲げ、NEとなった菊島宙(背番号8)と鈴木里佳(背番号10)のユニフォームとともに。
「IBSAブラインドサッカーワールドグランプリ2025 in うめきた」(女子カテゴリー)大会最終順位
優勝 日本
準優勝 アルゼンチン
3位 オーストラリア
4位 イングランド
個人賞

MVP:グラシア・ソーサ・バレネチェ (アルゼンチン・背番号8)

ベストGK:藤田智陽(日本・背番号23)

得点王:ジョアナ・アギラル(アルゼンチン・背番号10) 3試合で5得点。島谷は次点で3得点。
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