IBSA(国際視覚障害者スポーツ連盟)公認、男子のIBSAブラインドサッカーエリートカップ2025と女子のIBSAブラインドサッカーワールドグランプリ2025 、あわせて「ダイセルブラサカウィークin うめきた」は5月21日。この日で総当たり戦の順位が確定。22日より順位決定トーナメントを戦う。男子日本代表は平林太一の今大会2得点目(流れの中のゴールは実に国際大会1年ぶり)でタイに勝利し1位。女子代表は島谷花菜が今大会チーム初得点を決め、イングランドを下して2位となった。男子は22日19時からタイと、女子は23日19時からオーストラリアと準決勝を戦う。

雨の中多くの観客が集まった。
男子:日本vsタイ 固いをタイの守備をこじ開けて1-0で勝利

試合前の両チームを観客視点で。ビールを片手に観戦したい。
東京パラ以降のタイとの対戦成績は2勝2敗(共にPK戦で敗退)2分と五分五分の成績。侮れない相手だ。タイはこれまでの2戦のスタメンを全員入れ替えてゲームに入る。日本はGKが泉健也(背番号1)がはいった以外は、アルゼンチン戦と同じ、齊藤悠希(背番号7)、川村怜(背番号10)、永盛楓人(背番号3)、後藤将起(背番号8)。第1ピリオド、日本は試合の入りで全体的に落ち着きがなく、あわやオウンゴールというシーンもあった。4分に、永盛から平林にスイッチすることで徐々に攻撃へ軸足が移る。タイは、常に3人が自陣に引き、日本の侵入に対してはもう1人も戻ってダイヤモンド型で対処する。日本は平林を一としてドリブルで左右に動きながら崩そうとするがなかなか綺麗にいかない。

タイの堅守に苦しめられた日本。平林にフィールドプレーヤー全員がつく
9分には林健太が入る。コーナーからのシュートを放つもいつもの切れがない。本人も「なんか緊張だったりとか、ボールだったりピッチ上のコンディションに対応しきれてなくて、自分の思うようなプレーがしきれなかったのですごく今悔しい」と試合後に語った。その後高橋裕人、本郷宗大もピッチに入るが、局面の打開には至らず0-0で第1ピリオドを終える。
第2ピリオドは永盛、平林、川村、後藤の布陣でスタート。過去2試合で結果を出した後藤へのゴールクリアランスも3枚、4枚と自陣に引くタイの守備陣をなかなか掻い潜れない。11分に永盛に変わって齋藤がはいると、今度は齋藤を左アラにおき体格で押して局面の打開を図ろうとする。

タイのディフェンスをわって、ゴールに迫る齊藤悠希。

川村怜もタイのディフェンスに手を焼きなかなかフィニッシュまで持ち込めない。
川村、平林がドリブルで左右にふりシュートを放つ。残り、2分を切ってとこで何度目かの左コーナーキックを得た日本。平林がドリブルで一旦引いてから前を向いた時にスーッとタイのディフェンスが開いた。そこをすかさず平林が素早くシュート。ゴールニアサイドにボールが突き刺さり待望の1点を得る。何度も何度も同じ形を繰り返してやっと手にした一点。

ペナルティー外だが、思い切ってのシュート。
この後、後藤がセンターライン付近でボールをキープしたり、時間を使いタイムアップ。予選1位を確定させた。準決勝では同じくタイとの対戦となる。多分、今日出場しなかった、パニャウット・キパン(背番号7)、ブラクロン・プアイ(背番号10)、
ソムチャイ・アゴン(背番号14)、キィティコーン・ボーディー(背番号35)が出てくるだろう。今度は積極的にキパン、ボーディーが日本に攻めてくることが予想されるのでよりダイナミックな試合が展開されると思う。楽しみだ。
女子:日本vsイングランド 島谷花菜の一撃が日本を活性化させる

君が代斉唱の日本代表。

イングランド代表も高らかにGod Save the Kingを歌う。サッカーのA代表と同じエンブレムをつけて戦う。
何よりも1点が欲しい日本。前日の「自ら難しくしてしまった」(若杉遥談)試合を払拭すべく「アップの時からみんな声が出てきてよかった(竹内真子)」状況で試合に入る日本。イングランドとは2度目の対戦。前回は23年の世界選手権で対戦し5-0と圧勝。島谷、若杉共に初ゴールを記録している。「この2年間で敵も強くなっている。集中してやればできるという強い意志をおもってゲームに入った(島谷)」。

得点に結びつかなかったしっかりとしたシュートを放つ竹内。
ただ、試合開始後から雨足が強くなり、「ピッチでの聞こえ方に違いもありばたついた(竹内真子)」日本代表、特に竹内、西山が被るシーンが多く、攻撃重視のフォーメーションおため、空いたスペースをサマンサ・ゴフ(背番号9)に自由に動かれてしまい不安を感じさせるスタートとなった。
西山乃彩も前後に動きながら、強力なシュートを放つようになる。だんだん、島谷、竹内、西山が個々にボールをもってイングランドのゴールを脅やかすようになる。

ディフェンスを交わしながらシュートを放つ西山乃彩。彼女の初得点を期待したい。
17分、センターライン付近でボールを収めた島谷が高に構えるイングランドの守備のラインで隙間をついてキーパーと1対1に、ゴール右高めに左足で蹴り込み、待望の得点を奪った。「思った通りのことができてすごく嬉しかった」とその時の気持ちを語る島谷。不思議なもので魔法が解けたように選手のコミュニケーションがよく動きも滑らかになっていったような気がする。

島谷の元に駆け寄るメンバー。
第2ピリオドにはいると、すっかり落ち着きを取り戻した日本そのまま優位に試合を進め、残りを5分をきると、1人を残して自陣に引き、3分を切るとGKを和地梨衣菜にスイッチし全員が自陣に戻って守備に徹し、初勝利を確定した。「状況をかえないといけないと臨んだところ、みんなで協力できた試合だった。このピッチで試合ができるこがすごく幸せな気持ちでいっぱいです。」と竹内が語った。次は第2戦、ネガティブスパイラルから自滅してしまったオーストラリアが相手。オーストラリのGK ケイシー・デュモントは元オーストラリアA代表、現在はA-League Women(日本でいうWEリーグ)のパース・グローリーの正ゴールキーパーだ。彼女の壁を崩せるか楽しみだ。
男子:コロンビア対アルゼンチン アルゼンチが激闘を制す

倒れ込みながらもシュートをきめるイトゥリア。
日本ではなかなか目にする機会のないカード。期待に違わず激しい「サッカー」を展開した。ベストメンバーのアルゼンチンに対して、ファン・ペレス(背番号10)、ジョン・ゴンザレス(背番号9)の両ストライカーをベンチスタートさせたコロンビア。途中から両者がはいり、一方でアルゼンチンは途中エスピニージョが下がったりと交代枠を駆使しながら1ピリオド20分間休みなく両チームがピッチを駆け回る見応えのある試合だった。第2ピリオド3分、自陣でルーズボールを収めたダニエル・イトゥリア(背番号10)がそのままセンターレーンを独走、コロンビアの選手をごぼう抜きして最後はペナルティエリアで倒れ込みながらも右足でゴール右隅にボールを押し込みアルゼンチンが先制。その後も、押し気味に試合を進め、1-0で勝利した。

コロンビアを引っ張ったファイター ジョン・ゴンザレス。なかなかシュートが打てず。

やはり強いパディージャ(左)寄せるディディエール・アルチーラ(右)をしっかりブロック。

アルゼンチンといえばエスピニジョだが、従来のように左壁際にでーんと構えるスタイルから変化。ピッチを駆け巡る。髪の毛のメッシュは入れず地毛の黒。
女子:アルゼンチン対オーストラリア オーストラリアは健闘するも得点を奪えず

国歌斉唱中のオーストラリアのメンバー。レイチェル・パークス(背番号5)
とズザンナ・ピョトロフスカ(背番号7)そして、ケイシー・デュモント(背番号22)が今回初参加。
オーストラリアチームはまだ立ち上がったばかり。そのチームが世界選手権王者のアルゼンチンに挑んだ。結果は、アルゼンチンの点取り屋ジョアナ・アギラル(背番号10)が第1ピリオド、3分と8分にゴールを決めた。その後第1ピリオド終了間際に接触で右膝をいため担架で退場した。第2ピリオド9分でキャプテンのグラシア・ソーサ・バレネチェがベンチに下がり、アルゼンチンは主力2枚を抜いた形で残りの時間を戦った。オーストラリも自陣前に3枚のFPを並べしっかり守り、そのまま2-0でアルゼンチンが勝利した。

小刻みなドリブルワークで相手を翻弄するグラシア・ソーサ・バレネチェ。

総当たり戦1位抜けを確定させたアルゼンチンのメンバー。日本のサポーターと勝利の舞。こういった距離感もこの大会の魅力
オーストラリは3人のメンバーが初めて試合参加するという発展途上のチームだ。ただ1人「初参加」といってもオーストラリアA代表を経験したGKケイシー・デュモントは別格だろう。もともと12月にオーストラリアチームが来日した際は別のGKが参加したが、今回は所属クラブの関係で来日できず。急遽、手を尽くしたところちょうど人を介してシーズンオフに入ったデュモントにただ降り着いた。実際看護師のバックグランドを持つ彼女は「素晴らしい機会だし、職業に関して、人間として幅を広げてくれるだろうし、学びになると思って参加した。また再び国を代表できることは嬉しいこだ」と引き受けた。実際にチームに加わったのは1ヶ月前。実質の練習は1回だけでほぼぶっつけ本番の状態。「18年間の経験があるし、やることは変わらない。もっともゴールエリアからでてはいけないというルールには戸惑ったけど」。指示についての違いを質問すると「展開が早いのでいつもなら6語で伝えるところを3語で伝えなければならない。でも大きな違いではない」。
アギラルに2点決められたことについては、「味方の脚にあたって方向が変わり私にとってはアンラッキーだっただけ。私たちはとてもよくやったわ」と手応え感じていた。10月に開催される世界選手権への出場にも前向きで「契約更新したパース・グローリーは非常に柔軟なので前向きに検討したい」と語っていた。もし実現すれば、これは非常に楽しみだ。期待したい。

左からコーチの藤井潤さん、ケイシー・デュモント、監督のサラ・エリザベス。
総当たり戦の結果と、日本の組み合わせは?
以下が今回の結果となる。まずはまもなく始まる男子代表に注目だ!
総当たり戦結果
男子 エリートカップ2025
1 日本(勝ち点7)
2 アルゼンチン(勝ち点6)
3 コロンビア(勝ち点4)
4 タイ(勝ち点0)
女子 ワールドグランプリ2025
1 アルゼンチン(勝ち点9)
2 日本(勝ち点4)
3 オーストラリア(勝ち点2)
4 イングランド(勝ち点1)
5/22 男子準決勝
15:00 アルゼンチン対コロンビア
19:00 日本対タイ
5/23 女子準決勝
15:00 アルゼンチン対イングランド
19:00 日本対オーストラリア
コメント