ブラサカウィーク in うめきた 二日目:女子代表登場、アルゼンチンに惜敗も大きな手応え。

Blind Football
ソーサ・バレネチェに負けじと競い合う竹内。

5月18日よりJR大阪駅とグランフロント大阪との間にあるうめきた広場を舞台にIBSA(国際視覚障害者スポーツ連盟)公認、男子のIBSAブラインドサッカーエリートカップ2025 in うめきた(以下、男子エリートカップと略)と女子のIBSAブラインドサッカーワールドグランプリ2025 in うめきた(同じく、女子ワールドグランプリ)、あわせて「ダイセルブラサカウィークin うめきた」が開催される。2日目の様子をお伝えする。

まだ予選。惜敗も選手の成長を感じた日本対アルゼンチン戦

試合前の両チーム

2023年8月、バーミンガムで初開催された世界選手権決勝でアルゼンチンに敗れた後、女子代表山本夏幹監督は、「他国と比べて恵まれた環境の中、どれだけ真摯にサッカーをしているのか振り返る必要がある」と反省の弁を口にした。そのコメントに対して自分たちがこの2年間でどこまで積み上げて来れたのか「僕らがやれる最大限をやりました」「全員心拍数が190を超えていたけれど戦いきれた」その言葉に、負けはしたが「バーミンガムの悲劇」を糧にして成長の手応えを感じ取れた。

試合後、充実した表情でインタビューに応える大阪出身の島谷花菜。後半シュート三本を放ちアルゼンチンゴールに迫った。

菊島宙という唯一無二のストライカー(これまで国際試合で全51点中42点を決めている)と、フィクソとしてチームに安定感をもたらす鈴木里佳が直前で不参加となり、交代なしで戦わなければいけない状況で入ったこの試合。「まずは初戦、入りを大切に。雰囲気はよかった」とGKの藤田智陽(背番号23)。フォーメーションはGK藤田智陽、フィクソには怪我から復帰のキャプテン若杉遥(背番号14)、左アラに3月に選出されたばかりの西山乃彩(背番号9)右アラに島谷花菜(背番号13)、ピヴォに竹内真子(背番号7)。アルゼンチンは、GKがミカエラ・セゴビア(背番号12)、フィクソにギジェルミナ・コラレス(背番号14)、アンカーにアグスティナ・メディナ(背番号4)、左ピヴォに点取り屋のジョハナ・ アギラル(背番号10)右ピヴォにキャプテン、アルゼンチの魂、グラシア・ソーサ・バレネチェ(背番号8)、のフォーメーション。アルゼンチンは想定通り、前線の2人が攻撃を担う。対する日本は特にアギラルをケアしつつボールを自由自在に操るソーサ・バレネチェを自由にさせないよう四人で守る。攻撃は主に竹内が中央から左サイド、右サイドを島谷の分担で主に竹内が単騎で攻め込む形で試合は進む。動いたのは第1ピリオド9分。左コーナーキックを受けたアギラルが一旦下がりながら左からカットイン、島谷もフォローするが追いつかず、右足の素早いトーキック。「見えてはいたが思った以上に早いモーションで反応できなかった(藤田談)」ゴールから10mほど離れたところから放たれたボールはゴール右に刺さりアルゼンチンが先制する。

島谷(右)をものともせずにシュートモーションに入るアギラル(背番号10)。

日本はその後も守備に比重をおきながら、竹内、島谷が単騎で上がり、ゴールを狙う。守備においては西山が対峙するソーサ・バレネチェを抑えながら時に、反対サイドまでケアをする。残り5分くらいは竹内の体が重く感じられシーンもあった。結局シュート2本を放っただけで第1ピリオドが終わる。

初出場の西山(左/背番号9)がソーサ・バレネチェ(右/背番号8)とマッチアップ。

「交代のいない中、選手の状況をみて強弱のコントロールを心がけた」という藤田。

第2ピリオドも同じ選手で両チーム入る。日本は徐々に竹内、島谷が同時にあがるシーンも作りながら攻め手を探る。竹内も再び積極的に上下動を繰り返し、藤田からのゴールクリアランスを受けて相手ゴールをねらう。フィクソの位置についたメディナのチェックでなかなかいい形でシュートが打てない。

相手のプレッシャーの強い中、サイドチェンジなどにトライできず、逆にアルゼンチンはソーサ・バレネチェやアギラルのサイドチェンジ、浮き球をつかったダイアゴナルなパスなどで日本ゴールに迫る。10分を過ぎたころ疲れの見えるアギラルがベンチに下がる。「ここストロングとれるぞ」とタイムアウトで山本監督は選手を鼓舞、ここから日本は一気呵成の攻めに転じる。直後に、菊島についで点取り屋の島谷が初めてシュートを放つ。残りを3分を切るとさらに日本は圧力をかける。西山も積極的に前にでてソーサ・バレネチェからボールを奪う。

第2ピリオドは自ら積極的にしかけるようになった西山(背番号9)

残り2分を切ったところで右45度、右13mでFKを得る。竹内がアルゼンチンの壁の後に立ち、GKにプレッシャーを与える。ボールをもった西山がシュートも相手GKにブロックされる。続くCKも西山が角度のないところからシュートを放つがGKがキャッチ。西山は「ブラサカは初めて半年弱でまだしっかり蹴れない時があるがこの二本はしっかりシュートができた」と振り返った。残り1分を切ったところでソーサ・バレネチェが右フェンス沿い10mの付近からゴールファーサイドに鋭いシュートを放つも藤田が横っ飛びでブロック。残り11秒で島谷がドリブルで持ち込みシュートを放つもややヒットせず。

少し、ボールが足元にはいったか、クリーンヒットしなかった島谷のシュート。

7本(手元集計)のシュートを放ちゲームを優位に進めたが1点を奪えず、結局そのまま1-0でアルゼンチンが勝利した。

試合後、観客を前に島谷が充実感ある笑顔でインタビューに応える。バーミンガムの時は心拍数190で前にでれなかったチームが最後まで走り切った。前キャプテンで、度々チームの危機を救ってきた竹内は、心拍数197を記録しても走り続けた。あとは、タイミングよくシュートを放つだけだ。「ホーム初戦、プレッシャーのかかる中で準備できたものを100%出せた。僕としてはポジティブだ」「ワクワクするブラサカがお客さんに伝わったのではないか」と改めて手応えを語った山本監督。藤田、西山も初めての国際試合を最高の相手と対戦して世界の圧を感じられた。今日の経験をベースに、次のアルゼンチン戦、願わくばこの決勝戦で輝いて欲しい。

山本監督に請われスタッフとしてベンチ入りした菊島(画面真ん中)。

オーストラリア初の公式戦をイングランドと引き分ける

イングランドゴールに迫るイングリッド・マッケナ(背番号2)

女子初のブラインドサッカーワールドグランプリが、サッカーの母国英連邦の二国で開幕した。イングランドは2019年にチームを結成、オーストラリは女子W杯が開催された23年にチームが結成された。イングランドは23年の世界選手権に出場、8位に終わったが今年4月に開催されたスウェーデン、ポーランドとのIBSA Tri-Nations Cupでは三連勝で優勝している。ただ、4得点で得点王となったLucja Wyrwantowiczは今回参加していない。

第2ピリオド 前線で気を吐くイングランドのサマンサ・ゴフ(背番号9)

試合は0-0のスコアレスドローに終わった。イングランドはサマンサ・ゴフが積極的にボールを運ぶがオーストラリアのディフェンスをこじ開けることができなかった。一方、初参加のオーストラリアはイングリッド・マッケナなどがボールを前線に運びしっかりチームとして組み上げている印象を受けた。

ドリブルでチャンスを作り出したチャカナン・ブワカオ(背番号6)

この日を終わり、女子の暫定順位は以下の通り。
1 アルゼンチン(勝ち点3)
2 オーストラリア(勝ち点1)
3 イングランド(勝ち点1)
4 日本(勝ち点0)

コロンビア対タイ、非常に激しい試合は1-0でコロンビアが暫定首位に立つ

ジョン・ゴンザレス(背番号9)の一撃によるリードを守り切ったコロンビア。

この日開催されたエリートカップはコロンビア対タイの1試合、非常に激しい試合となったが、第1ピリオド7分、左サイドからカットインしたジョン・ゴンザレス(背番号9)が左足でファーサイドにシュートを決めて先制。守っても、キパン(背番号7)、ボーディー(背番号35)などのシュートをGKのアルディラ(背番号1)が好セーブ。第2ピリオド残り2分、アルディラはゴールエリア外で手を使ったとハンドの判定を受けるも、そのPKをしっかりブロックし勝利した。

タイのボーディー(背番号35)のシュートをブロックするアルディラ(背番号1)

タイのロナウドことキパンも何度とシュートを放ったがゴールに結びつかず。

スタメンのジョン・ゴンザレス(背番号9)がコロンビアを引っ張った。

タイのキーパーポンチャイ・カシコヌドムバイサン(背番号1)は後半出場でしっかりゴールに鍵をかける活躍。

二日目を終えての暫定順位は以下の通り。
1 コロンビア(勝ち点4)
2 アルゼンチン(勝ち点3)
3 日本(勝ち点1)
4 タイ(勝ち点0)

本日5月20日は、15時から女子代表がオーストラリアと、19時からは男子代表がアルゼンチンと対戦する。月曜日の夜もかかわらず、関東含めて各地から観客が集まり大盛り上がりを見せた本大会。ぜひとも現地で。難しければ上記のYoutubeLiveでぜひ、ブラサカを体感して欲しい。

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