山下公園を舞台に行われる春の風物詩ワールドトライアスロンパラシリーズ2025/横浜は、雨に降られることが多い大会だ。5月17日(土曜)に開催された13回目の大会は、去年の好天の大会から一転、時折強く雨が降る中、66名の選手が山下公園を中心にスイム 750m, バイク 21.25km、ラン 5kmのコースで競い合った。
個人的な注目は13回を数える横浜大会で初めてベルギー(私の第二の故郷!)から参加した2024年世界選手権で優勝したヴィム デ パーパ(PTS2男子)、そして絶対的王者、アレクシス・アンカンカン(PTS4男子)が無敗記録を伸ばすか、だ。果たしてこの雨をものともせず、デ パーパは横浜初優勝、アンカンカンは公式戦無敗記録を40(横浜は7連勝)に伸ばした。
アンカンカンは圧倒的勝利

歩道からの声援に表情もゆるむアンカンカン
2位となるマイケル テイラーにたいして2分半以上の差をつけての圧勝だった。レース中は東京パラでフランスパラトライアスロンチームがキャンプをはった富士河口湖町の方の「Allez! Allez!(がんばれ!)I」という声援に頬をゆるませる余裕もあった。

富士河口湖町の皆様。このキャンプがきっかけでMt.富士トライアスロン富士河口湖が開催されることに。
レース後のミックスゾーンでは記者から問われて左腕の裏にいれた富士山(東京パラの象徴)とエッフェル塔(パリパラの象徴)に日本語で家族の名前が入った刺青をみせながら「私はヤクザではありません」とおどける一面を見せるなど、レース終了後も笑いを振りまいた。次の目標を聞かれると「レースのスタイルも特に変えていない。次の目標はLA2028」とキッパリ。今期初レースも完勝、どこまで連勝を伸ばすのだろうか。

レース後、ミックスゾーンでお茶目なポーズを取るアンカンカン
横浜大会初登場のベルジャンは完勝

少し控えめな初出場初勝利の喜び
横浜は、ベルギービールのイベントを毎年開催しているがベルギー選手の参加は13回を数える大会で初。21年からトライアスロンを始めたベルギーの鉄人ヴィム デ パーパが、水泳でのトップに立ち、バイクでさらにリードを広げ、そのままゴールした。「勝つために横浜にきた」とレース後に語る通りの完勝であった。10歳の時に実家の農業器具の事故で片足を失った彼が始めたスポーツは水泳だった。水泳選手としてはアテネパラリンピック2004に自由型の選手として出場し、6位入賞を果たしている。その後、一旦競技の世界から離れたが、「やはりスポーツを愛している」ということに気づき、2019年にサイクリングを始める。

ホテルニューグランドの前を滑走するデ パーパ。 左はグレゴワール ベルトン(PTS4)
それまでランニングをしたことがなかったが、水泳、サイクリングときたのでそれならトライアスロンを始めようと思い立つ。21年9月初めて参加したヨーロッパ選手権で3位、以後出場する大会、大会で好成績を収め、24年の世界選手権で初優勝を果たした。強さの秘訣を聞くとは「わからない」という答え。日本の感想を聞くと「千葉で一週間トレーニングをしてまだどこも回っていない。2日東京を楽しむつもり」「そのあとベルギーに戻りヨーロッパ選手権に備える」と予定を語る。今後の予定を聞くと義足を変えるとのこと。「より早くなるよ」と語る。長期的な目標は「金メダルが欲しい。LA2028を目指す」と語った。

レース終了後のデ ペーペ。何を考える?
奇しくもアンカンカンとこのデ パーパは同い年でともにフランコフォン(フランス語話者)。クラスは違うも右足が義足(デ パーパは膝上、アンカンカンは膝下)。アンカンカンだけではなく、デ パーパも今後追いかけていきたい。
日本選手は?

銀メダルを獲得した秦由加子のバイク。
日本人選手は7カテゴリー12名が参加した。その中で秦由加子(PTS2女子)が21年以来の銀メダル、保田明日美(PTS2女子)、谷真海(PTS4女子)、木村潤平(PTWC男子)が銅メダルを獲得した。

木村潤平は23年に優勝して以来のメダルを獲得。

東京パラ銀メダルの宇田秀生(PTS4)は5位に終わる。
天候に加えて一つ残念だったのは、PTVI女子の2024年チャンピン、スザーナ・ロドリゲスが参加しなかったことである。去年の横浜のレース後に「もし引退したら真っ先に日本にバカンスに行く」と語るほど日本贔屓の彼女の不参加は本当に残念だ。PTVI女子のレースは彼女に続いてパリパラリンピック銀メダルだったフランチェスカ タランテッロが勝利した。このまま、タランテッロの時代となっていくのか、こちらも注視していきたい。

フランチェスカ タランテッロ(PTVI)/左とガイドのシルヴィア ヴィザッジのシンクロしているラン

表彰式後のお楽しみ。
今回参加国の中では一番メダルを獲得したのはフランス!
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