4月9日に5月18日からうめきた広場(大阪市)で開催される「ダイセルブラインドサッカーウィーク in うめきた」の試合スケジュール発表記者会見があった。その様子を2回に分けてお届けする。今回はこの大会の位置付けと組み合わせに、次回は参加国、および日本代表についてレポートする。

会場となる大阪駅前グランフロント大阪 うめきた広場 (2024年7月撮影)
2025年の位置付け
パラリンピックの翌年は次のパラリンピックに向けてスタートの年。2026年のアジア選手権に向けて活動を開始し、2027年の世界選手権、そして2028年のLAパラリンピックと繋がる。例年ではアジア選手権で優勝、または世界選手権で上位に入ることがLA2028行きチケットを手にするためには必要だ。
ただ、これは男子の話。
女子にとっては今年は二重の意味でBig Yearだ。1つはLA2028で正式種目となるか決まる年、もう1つは世界選手権が開催される年だからだ。すでにブラインドサッカー自体は正式種目に選ばれている。しかし女子のトーナメントはまだ確定しておらずこの夏頃に決まると言われている。女子も種目として選ばれるためにはいくつか条件がある。IPCのハンドブックでは、過去8年間で2回世界選手権が実施されていること(基本は4年単位)。そして普及具合の尺度として3つの大陸(アフリカ、アメリカ、アジア、ヨーロッパ、オセアニアの内)で、18カ国が最低でもプレーしていること定められている。

2023年8月 世界選手権決勝で日本を破り初代チャンピオンに輝いたアルゼンチン代表
世界選手権については、2023年にバーミンガム(イングランド)で8カ国(アルゼンチン、イングランド、インド、オーストリア、スェーデン、ドイツ、日本、モロッコ)を集めて初開催され、2回目が2025年10月にコチ(インド)にて予定されており、すでに日本、ポーランド、イングランド、カナダ、アルゼンチン、ブラジル、オーストラリア、インドが参加を表明している(インドブラインドサッカー協会談)。
すでに5つの大陸すべてでプレーされており、少なくとも筆者が把握している限りでは、14カ国で女子代表が存在する(IBSA ランキングの10カ国+カナダ、ブラジル、ポーランド、コロンビア)。次のパラリンピック開催国のアメリカ合衆国では男子代表が2019年に立ち上がったばかり。女子代表チームはまだ正式には結成されていないが普及活動は始まっていると聞く。そのほかIBSAのサイト等ではフランス、ケニヤなどでの活動が報告されているので資格としては満たしている可能性が高い。そんな状況の中、今回女子として初のワールドグランプリがこのタイミングで開催されることは選考に対しても大きな意味を持つ。
もう一つ、この10月の2回目の世界選手権が予定されている。世界に先駆けて女子代表チームを立ち上げた日本は、前回大会、初代王者を目指してバーミンガムに乗り込んだ。順調に決勝に進出し、決勝は過去にノーマライゼーションカップで2度戦って勝利を収めているアルゼンチン(但し、当時はアルゼンチン選抜として参加)。菊島宙のゴールで先制するも、不運にもヨハナ・アギラールに決勝点となる第2PKを決められ準優勝に終わった。この雪辱を晴らす意味でも重要な大会だ。

2023年8月世界選手権で銀メダルに終わった女子日本代表
「ダイセルブラインドサッカーウィーク in うめきた」とは
パリパラリンピック壮行大会として、去年7月にモロッコ、メキシコ、マレーシアを招いて開催された、「ダイセル ブラインドサッカージャパンカップ 2024 in 大阪」がJR大阪駅に隣接するグランフロント大阪のうめきた広場で開催された。世界的に大変珍しい街中でのイベントとして4日で5千人(日本ブラインドサッカー協会/JBFA調べ)を集めた。

2024年7月 ジャパンカップより。選手と観客の近さが新鮮だった
今回はそれを8日の間のイベントにパワーアップし、国際視覚障害者スポーツ連盟(IBSA)公認の大会である男子の「IBSAブラインドサッカーエリートカップ2025 in うめきた」と女子の「IBSAブラインドサッカーワールドグランプリ2025 in うめきた」を「ダイセルブラインドサッカーウィーク in うめきた」として同時開催する。男子は、日本(ランキング3位)のほかにパリパラリンピックで苦汁を嘗めたアルゼンチン(同1位)、コロンビア(同8位)、そしてアジアの強豪、タイ(6位)が参加する。女子は、日本(ランキング1位)、イングランド(4位)、アルゼンチン(5位)、そして国際大会初のオーストラリアが参加する。
男子のエリートカップは、今回が初開催の大会だ。「IBSAランキング8位以内の国に出場権が与えられ、世界のブラインドサッカーの競技力向上、各国のレベルアップに寄与する大会」と位置付けられる(JBFA 松崎英吾専務理事 談)。パリパラリンピック以降、IBSAは各大陸でDivision2を設定、ワールドワイドではIBSAランキング8位から16位までの国々に出場権のあるNations Cupを創設し従来よりキメ細く競技力の向上を狙っているなかで創設された。
ワールドグランプリは東京パラリンピックに向けて開催されて以来、主にパラリンピックホスト国が開催する世界選手権に次ぐ位置付けの大会だ。女子のワールドグランプリは去年10月アルゼンチンで開催される予定だったが、キャンセルされたため今年が初の開催となる。

3つのワクワクを語るJBFA金子久子理事長
JBFA金子久子理事長は会見で、3つのワクワクとして1)大会のスケールアップ、2)世界のトップレベルの参加、3)大阪駅前という都市型のロケーションを挙げた。前述の通り、男子だけの4日間のフレンドリーマッチが男女のIBSA公認大会として8日間。世界上位の国が男女とも参加する。「都会の喧騒の中で、音を頼りに高い集中力とタフさという選手の真の力が試される大会だ。今年は5月というベストシーズンが観客にとっても選手にとっても最高のコンディションになるだろう。この大会を通じてブラサカの魅力をさらに多くの方に知ってもらい、誰もが楽しめるイベントにしていきたい」と語った。

2024年7月 階段を即席の客席にしてジャパンカップを観戦する
去年に引き続き大会スポンサーである株式会社ダイセルの小河義美代表取締役会長は「「うめきたでブラサカ」という言葉を流行らせたい。障害者スポーツではなく、サッカーとはまた違うエキサイトな面がある競技としていつも身近に感じるものにしたい」と期待を語った。

女子の初戦、アルゼンチン戦を引く北澤会長
大会のフォーマットは、男女とも総当たり戦で順位を決め、1位と4位、2位と3位が準決勝を行い、決勝と3位決定戦を行うものだ。どのチームも8日間で5試合を戦う。ダイセル小河会長と日本障害者サッカー連盟(JIFF)の北澤豪会長により抽選会が実施され組み合わせは以下の通りに決まった。
5月18日 (日)
男子 14:45 アルゼンチン vs タイ
男子 17:45 日本 vs コロンビア
5月19日 (月)
女子 12:00 オーストラリア vs イングランド
男子 15:30 タイ vs コロンビア
女子 19:00 日本 vs アルゼンチン
5月20日 (火)
女子 12:00 イングランド vs アルゼンチン
女子 15:30 オーストラリア vs 日本
男子 19:00 アルゼンチン vs 日本
5月21日 (水)
女子 10:00 アルゼンチン vs オーストラリア
男子 13:00 コロンビア vs アルゼンチン
男子 16:00 日本 vs タイ
女子 19:00 日本 vs イングランド
5月22日 (木)
男子 15:00 準決勝
男子 19:00 準決勝(日本戦)
5月23日 (金)
女子 15:00 準決勝
女子 19:00 準決勝(日本戦)
5月24日 (土)
女子 12:30 3位決定戦
女子 16:30 決勝戦
5月25日 (日)
男子 12:30 3位決定戦
男子 16:30 決勝戦

発表されたキービジュアル。横から見たアイマスクとブラインドフットボールのBを掛け算したもの。まぜこぜの未来、混ざり合う社会を見つめる選手を表現する。日本ブラインドサッカー協会提供。
最後に北澤会長からは、「パリ(パラリンピック)の応援の環境をみていくと、タフでないと戦えなかったでのはないか。」「パリを経てブラインドの常識がやっぱり変わってきたところがあると思う。」とブラサカに進化についてのコメントがあった。さらに「JIFFとしてもブラサカの活動をロールモデルととらえ注目している。他の障害者に与える影響力も大きいと思う。ぜひこの大会に注目して欲しい」と締め括った。次回は、登壇した監督、選手からのコメント、代表合宿の様子などを交えてお届けしたい。
お詫び:
初出の際に、金子久子理事長の肩書を間違えて掲載してしましました。申し訳ありませんでした。
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