2025年2月15日(土)、サイデン化学アリーナさいたま(さいたま市記念総合体育館/埼玉県さいたま市)で「さいたま市ノーマライゼーションカップ2025」が開催され、日本代表が5-0でインド代表を破り、10月にインドで開催される世界選手権に向けて幸先のよいスタートを切った。

日本、インド両代表他、前座試合に参加したメンバー、パフォーマンスを披露したSAKURA ANGELS、studio LABRA、笑まいCHEER&DANCE STUDIOなどと共に
ノーマライゼーションカップとは
筆者も初めて取材をするので改めてこの大会について、日本ブラインドサッカー協会(以下JBFA)からの情報を引用する。「本大会は、2011 年にさいたま市が全国の政令指定都市に先駆けて制定した「さいたま市誰もが共に暮らすための障害者の権利の擁護等に関する条例(ノーマライゼーション条例)」の理念に基づき、2013 年から開催」されている。「この理念と、JBFAの「ブラインドサッカーを通じて、視覚障がい者と健常者が当たり前に混ざり合う社会を実現する」というビジョンが重なったことから、本大会の共催」に至った。当初は男子日本代表の大会だったが、2018年より女子日本代表の大会として、以下の通り開催されている。
・2018年 対 アルゼンチン選抜 〇7-3
・2019年 対 IBSA世界選抜 〇10-0
・2020年 対 アルゼンチン選抜 〇8-0
・2024年 対 インド代表 〇1-0
なお、2023年は男子ユーストレセンチームと女子日本代表チームの試合が実施された。
インド代表について
インド代表はこの1月に公開されたInternational Blind Sports Federation(IBSA)の世界ランクで日本についで2位に位置付けられている。2022年に女子のアジア選手権が開催された際にチームとして初めて結成された。2023年イングランドのバーミンガムで開催された世界選手権では4位の成績を収めている。全ての選手がケーララ州(インド南部)出身だったが、今回来日したメンバー8名(含むGK2名)は、ブラサカ人口150名ほどの中から選抜され、ケーララ州1名、ウッタラーカンド州(北部)3名、グジャラット州(西部)1名、マハーラーシュトラ州(南西部)3名と全国から集まっている。多くは2022年以降にブラインドサッカーを始めた。ブラインドクリケットや陸上競技などをしていた選手で構成されている。年齢は20歳から27歳で若手が多く、それぞれ学業や仕事もあり年間通じての練習ができず、今回は15日間の合宿を経て2月13日に来日した。14日に日本代表と非公開の練習試合を行っている。国からの支援がないため、クラブやNGO、JBFAのサポートを受けて今回の来日を実現した。
試合の展開は
今年5月に最大5カ国を招き女子では初となる「IBSAブラインドサッカーワールドグランプリ2025 in うめきた」と、10月にインド、コチで開催される「IBSAブラインドサッカー世界選手権」の「優勝が至上命題」である日本にとって一つ一つの試合が大切になってくる。山本夏幹代表監督は、「14日の練習試合(日本が9-0で勝利)と今日の試合を予選、決勝と位置付けよりゴールに向けて縦の意識を持って向かった」とこの試合を振り返った。先発は、これが公式戦初となる藤田智陽(ふじたちはる)/free bird mejirodaiがGK、フィクソに鈴木里佳/コルジャ仙台、左アラに菊島宙/埼玉T.Wings、右アラに島谷花菜/free bird mejirodai、ピヴォに竹内真子/兵庫サムライスターズの布陣。

国歌斉唱する日本代表
第1ピリオド開始51秒、左アラの菊島が得意のカットインでゴールファーサイドにシュートを決め先制。その後も積極的に菊島、右アラの島谷がシュートを放つ。7分に菊島がゴールに押し込んで2点目。インドは、基本3人を自陣に残し、左サイドに1人12mラインにあげるフォーメーション。ゴールクリアランスが、このピヴォに届くがなかなか決定的な形を作れない。前半は2-0で日本がリードして終わる。

縦の意識が一番強い竹内のドリブル。

体育館の反響もあり、距離感が掴みづらかったと語った島谷(13番)のドリブル。
第2ピリオド、日本は島谷と菊島の位置を変え、第1ピリオード途中で入れ替わったフィクソに竹内、ピヴォに鈴木でゲームに入る。2分に右からカットインした島田が利き足の左でシュートし、ゴールニアに決めて3-0。5分には菊島が12メートルライン上から豪快にゴールファーサイド上に突き刺し4-0。11分にも菊島が決めて5-0。ほぼインドにシュートを打たせず、日本の勝利で試合を終えた。

島谷(13番)の得点シーン。一度ファーを向きながら、ニヤに決めた。

インドも左サイドからカットインしてゴールに迫るもフィクソの竹内(7番)に阻まれる。
選手たちの声
去年は学業のため不参加だった菊島は「得点を決めて、MVPもとれてすごい嬉しい」。「周りにパスをだしても決めてくれることができ、今まで自分が決めなきゃというプレッシャーが少し軽くなった」とチームとしての成長も喜んだ。1得点を挙げた島谷は「練習してきた型でシュートが決められて嬉しい」と日頃の成果を語った。更に5月の大会に向けて「出身地である大阪での開催なので、シュートスピードや、ドリブルの技術を高めていきたい」と抱負を語った。ゲームキャプテンの鈴木も「ワクワクするブラインドサッカーを見せるのがチームの目標。初めて外で女子日本代表がプレーするのを多くの方にみてもらいたい。女子の競技人口が少ないので多くの人に知ってもらいたい」とコメントした。

今回はピヴォでもプレー。相手ゴール前で構えてシュートを放つ鈴木(8番)。
今回公式戦デビューを果たしたGKの藤田は、日体大サッカー部に所属する。去年3月にJBFAが主催した2024ブラインドサッカー女子日本代表GKキャンプを経て日本代表に参加した。試合の感想について「ワクワクしていたが、すごい楽しみながらできてよかった」とまず第一声。「コーチングを武器にしているが、あと何歩動いてとか、具体的に指示し質を高めていけるよう日々頑張っている」と抱負を語った。

「練習でやったことが徐々にできた」と語った藤田。
女子日本代表次の予定は?
次の大きなイベントは、2025年5月18日(日)〜25日(日)大阪駅横グランフロント大阪うめちか広場でおこなわれる「IBSAブラインドサッカーワールドグランプリ2025 in うめきた」だ。女子の大会としては、世界選手権に次ぐ大会という位置付けになる。今回来日したインド代表は参加するとすでに宣言しており、その他のチームも含めて近いうちにJBFAから発表される予定だ。

去年のJapan Cupより。この至近距離で代表のプレーを観戦!
今回は1220名の観客が訪れ、菊島選手の力強いシュートなどに「おおお」とどよめきに似た歓声が上がっていた。山本監督も「選手のプレーに魅了されてのあの歓声は僕たちの力になる」と語る。「パリパラで1万人の観客を前に男子が舞い上がったように、僕らもやっぱり練習しておかないといけない」そういった意味での練習になることも強調していた。
代表キャプテンである若杉遥/free bird mejirodaiは、去年の怪我からだいぶ復帰が進み試合にはでなかったものの、膝のプロタクターを外し、別メニューでの練習をしていたことも5月に向けてのプラスの材料となろう。
5月までの公式戦となると、今のところ発表されているのは3月16日のブラインドサッカー地域リーグ2024 in 成田 。参加するのは女子代表が所属するチームでいくとfree bird mejirodaiのみなので、基本は合宿と、ユーストレセンなどとの練習試合が準備の場となる。ぜひ、それぞれが自分課題に向き合い、2023年世界選手権での逃した優勝を10月のインドの地で取り返せるよう積み上げていってもらいたい。
●個人賞

・MVP:菊島宙選手(日本・背番号 10)

・MIP:シェファリ・ラワット選手(インド・背番号 4)

参加した代表と、スタッフ。後段の左から彌冨圭一郎ガイド、松井史江トレーナー、山本夏幹監督、千葉眞理マネージャー、田中玲花トレーナー
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